あの日溺れた海は、


 
 
 
それから学校が終わると父の書斎にこっそり忍びこみ「ペソのだいぼうけん」を読むことが日課になっていた。



しかしそんな日常も長く続くことなく、最終巻である3巻も残り数ページのところまできてしまった。



世界中を飛び回ったペソだったが最後のお宝を示した地図はペソの家があるところで、本当の宝物は家族なんだよ、と説くなんともベタなものだった。読み終えてしまうことに寂しさを感じながらもついに最後の一文となった。
 
 

『ペソはこれからもずっとせかい中をとびまわるでしょう。
 
でもそれまではすこしおやすみ。
 
いつかペソがまたとびたつとき
 
そのときはきみがきっとつれていってくれるでしょう。』
 
 
 
 
わたしが連れていく。その言葉にどきりとした。
 
そうか、わたしがこの物語の続きを書くんだ。


自然とそう思った。
 

早速スクッと立ち上がり、父の机に置いてあった原稿用紙を掻っ攫うと自分の部屋へ続く廊下を駆けていった。