しかしコーチは襟を掴んだまま小さくつぶやくように言った。
「井上、お前神童と呼ばれているそうだな?」
コーチの言葉に驚きながら、ただ呆然と見つめた。
そういえば、コーチの恐怖政治が始まる前まではそんな風に呼ばれていたこともあった。それでも決して驕らずに練習を積み重ねてきたはずだ。
「それが最近はどうだ。大会があれば腹痛で欠場、練習では息継ぎさえもままならない。何が神童だ。俺がその根性叩き直してやる。」
そう言いながらわたしを引きずるように海の方へと進んでく。
わたしは身の危険を感じて身体を捩って抵抗した。しかし大人の男性に力で勝てる訳がなかった。
「おら!俺がいいって言うまで息継ぎするなよ!!」
「キャッ」
コーチはわたしの頭を掴むと勢いよく水中へと沈めた。
突然のことに訳もわからずゴボゴボと白い泡を出しながら暴れるわたしのことなどお構いなしに更にもっと深く沈める。

