「次!砂浜ダッシュ10本!」
小学6年生だった私は、半年前に就任したコーチに怯えながらも、周囲の期待に応えなければならないと幼心に考えていたので、スイミングスクールを辞めることができずにいた。
そんな年、毎年恒例の夏の泊まり込みでの合宿は例年通り同じように海辺での体力作りから始まった。
ただ一つ違うのはこれそこに鬼の形相をしたコーチがいたことだった。
今しがたもダッシュについていけなかったスクール生を平手で叩き、男の子はいとも容易く鼻から血を流しながら泣いていた。
恐怖で場がピリついているのが痛いほど分かった。次はわたしの番になるかもしれない、と思うとわたしは一生懸命ついていった。ついていかなければならなかった。
「次、うさぎとび!」
そう怒鳴るように言うコーチを前に一生懸命膝のバネを使って前に進む。
しかし最後の一本で、砂に脚をとられ転んでしまった。
やってしまったー
そう思ったのも束の間、グイと服の襟をコーチに掴まれた。驚きと恐怖で半ばパニックになりながらもコーチを見上げた。
来る…!
振り上げられるであろう手の平とその次に迫る痛みにギュッと目を瞑った。

