あの日溺れた海は、


「…そうか。藤堂が…。でもさ、そういうやつなんだろ、藤堂って。せっかくはながくれた写真を、いらねえって、人を簡単に傷つけるやつなんだろ。」
 

なぜか亮が怒り出して吐き捨てるように言う姿に、わたしは複雑な心境で見つめていた。


人を簡単に傷つける人。

そうとは思えない…けど。

そうなの、かな。

 
 
 それからというものの、なんとなく先生を避ける生活が始まった。といっても副担任なだけで、朝と帰りのHRが終わればまず顔を合わせることはなかった。

 
はずなのに。
 
 
 
 
 
「職員室に今日の5、6時間目で使う資料があるから日直は昼休みに藤堂先生のところまで取りに来るようにねえ。」 
 
 朝から柔らかい笑みを浮かべてそう言うおじいちゃんの声にわたしはどきりとした。

なんといっても今日の日直はわたしだからだ。
よりによって自分が日直の時に…と、わたしは心の中でがくりと項垂れた。


どうにか回避ができないものかと頭の中で考えてみたけれど何も浮かばぬうちに昼休みになってしまった。

お弁当を食べ終わると、重い足取りで職員室へ向かった。


 その足取りも職員室の扉の前で完全に止まった。大したことでもない、ただプリントを受け取るだけなのに、なぜか扉を開けようとすると勇気が出ない。

 ぐるぐると扉の前を行ったり来たりしている時だった。

「井上さん、何してるの。」