あの日溺れた海は、


「そういえば先生ってなんで教師になろうと思ったんですか?」



隣に座られたのはいいものの、気まずい沈黙が続く中、打ち破るようにわたしはそう聞いた。


それは今までなんとなく気になっていたことだった。


わたしの文章を『稚拙』だなんて言ってのけてしまうほど文才に恵まれているのならそれこそ小説家とか目指せばいいのに。


正直、生徒に興味がなさそうな先生だったから、教育者として生徒に関わりたくて、というような感じでもなさそうだし、教えるのが好きで、とかそういうわけでもなさそうだなと観察していて思っていた。




「ん〜。親が教師だったから、ですかね。」


案外さらっと答えてくれた先生にわたしは驚きつつも、「そうなんですね。」と言って、それ以上何も聞くことはできなかった。


わたしには大人の世界の詳しいことはわからないけれど、親が教師ならその子も教師にならなければいけない、とまではいかないけどふんわりとした摂理があるのなら、なんだか少し可哀想だなとまで思った。


そんな中で自由に夢を追いかけられるわたしって幸せ者なんだなあなんて呑気なことを考えていた。