「何してるんですか。」
あまりにもぼーっとしすぎて視界に人が入ってきたことさえ気づかず、突然声をかけられてびくりと肩を揺らした。
顔を上げるとそこには顔を顰めた藤堂先生が立っていた。
財布を手にしているから先生も飲み物を買いに来たのだろう。
「あ、いや…えと、…あ、そうだ、先生、これ。」
“ジュースを買いに来たけど財布を忘れて部屋に戻るのも嫌だったからぼーっとしてました”なんて言えるはずもなく、何か良い言い訳を考えていると、右ポケットに先生に渡すお釣りが入っていることを思い出した。
先生は一瞬顔を傾けたが、すぐに察したのか「ああ、」と言いながらそれを受け取った。
「アイス、ご馳走様でした。」
軽くお辞儀をしながらそうお礼を述べるわたしに、先生は「いえいえ。」と流した。
そしてそのまま自販機にお金を投入すると緑茶のボタンを押した。
ガコン、と落ちる音がしたかと思えば、先生は受け取り口からそれを取り出した。
そしてもう一度お金を投入すると先生はこちらを見て口を開いた。
「どれがいいですか?」
一瞬なんのことかわからなかったけど、すぐにわたしはにっこりと笑って「えっと…これが、いいです。」と答えた。
またガコン、と大きな音を立てて出てきたそれを先生は拾うと、わたしの前に差し出した。
ありがとうございますと先生にお礼を言ってわたしは受け取った。
先生はいつものように「いえいえ。」というと、部屋に戻るのかと思いきやわたしの隣の椅子へ腰掛けた。

