あの日溺れた海は、



月たちと旅館に備え付けられていた露天風呂に入った後、部屋で恒例の恋バナタイムが始まった。



「2組の鈴木くんってかっこいいよね〜!」


「ええ、月ちゃん、アレがタイプなの!?」


「そういえば5組の斎藤くんも爽やかでかっこいいよね!」


「ああ、サッカー部の次期エース?」


「そういえば、斎藤くんってはなと仲良しだよね〜」


不意に幼馴染の亮の話題になり視線を向けられたわたしはぎこちなく笑って言った。


「ただの腐れ縁だよ」


「そう〜?あんな人と腐れ縁なんて羨ましい〜」


亮は確かに顔もカッコ悪くはなくてスポーツも出来るし、昔はわたしより小柄なのにいつの間にか追い越されて、すらっとした長身になっていた。


亮のことを特別男として意識したことがなかったわたしはなんとなく気まずくて飲み物を買いに行くと言うのを口実にして部屋から抜け出した。

それに…先生に先程のお釣りも返さなければいけない。コーヒー1杯とアイス1つに1000円はお釣りがたくさん戻ってきた。







(ふう。あの空気やっぱ苦手だなあ)



確かに亮はモテる。告白されてるのだってよく耳にするし、バレンタインだってわたしがもらった友チョコの数よりも多くもらっているのを毎年見ている。


だけどずっと一緒にいるからか、他の人からそういう目で見られているところを知るのがなんだか変な感じがした。


そんなことを考えながら歩いていると自動販売機のところまでついてしまった。


しかしついた瞬間に自分の財布を持ってくるのを忘れたことに気づいてがっぐりと項垂れた。


部屋に戻ろうかとも考えたけどあの空気の中に戻るのは腰が引けて、そのまま自販機の横にある椅子に座ってぼーっとしていると。