この恋は、『悪』くない。


「おまたせしました
麻婆麺です」



「わぁいい匂い!
美味しそう」



「ここは麻婆麺がオススメなんだよね
ちょっと山椒強めだけど
澤村さん辛いの平気?」



「辛いの大好きです」



「ならよかった」



「いただきまーす」



「次は担々麺が美味い店行こうよ
2駅先のラーメン屋なんだけど
昼休みには無理だから
仕事帰りになるかな…
それか、休みの日にでも…」



森谷さんが水を飲みながら

私を見た



「休みの日…ですか?」





誘われてる?





Noって答えたよね?



「嫌ならいいけど…」



「嫌…って言うか…
それって、デートですか?」



「ハハハ…デートとかじゃないから…
ただ、会社の人と
ラーメン食べに行くってだけ…
オレ、デートはラーメン屋誘わないから」



「なんでですか?
じゃあ、どこ行くんですか?」



森谷さんがラーメン以外って

想像できない



「それは付き合ってからのお楽しみだけど
彼女とラーメン屋とか
集中して食べれないし
美味しく食べれない」





森谷さんに

付き合おうって言われたよね?


Noって返事したけど…


あ、だから誘ってくれるのか

なるほど


もぉ彼女の対象から外れてる



「私とはラーメン屋さん来ても
美味しく食べれますか?」



「うん、美味いよ」



「もし、あの時の返事が…
赤だったら…
私は森谷さんの彼女になってたんですよね?」



「うん、なってたね」



「そしたら私も
ラーメン屋さん以外のところに
連れて行ってもらえてたんですか?」



「もちろん!
澤村さん、どこ行きたかった?
もし、オレと付き合ってたら…」



「んー…そーですねー…

やっぱり…ラーメン屋さんかな?」



「ハハハハハ…」



「森谷さんとラーメン以外のところって
なんか、やっぱり考えらんないです」



「だよね…オレも

結局、そーゆーことなんだよね」



「え?」



「オレが澤村さんを選んだ理由は
澤村さんとなら
美味しくラーメン食べれるからなんだ」



「は、い?」



「オレさ
離婚してから彼女とかいなくて
再婚とかどーなのかな?って
たまに考えるけど…
澤村さんとならいいかな…って…」



「え…それって
彼女っていうより結婚相手ですか?」



「うん
もぉ遊んでられる年でもないし…
遊びじゃなくて真剣だったよ
だから、ちゃんと答えてくれてありがと」



森谷さんは真剣だった



やっぱり軽い気持ちで付き合わなくて

よかったのかもしれない



「それだったら
もっとお互い知ってから付き合った方が
いんじゃないですか?」



「オレは知ってるよ
ずっと澤村さん見てたから…
澤村さんはオレに
そんな気ないなって思ったから
意識させたかった」



意識…か…



「あ、冷めるから食べよ」



「はい…いただきます」