この恋は、『悪』くない。


樽崎くんと

アメと





それぞれの

10年



私もいろんなことがあったけど

樽崎くんの方が

きっといろんなことがあったんだろうな…



アメは

ずっとそれを見てたのかな?



アメに向ける

樽崎くんの

優しい眼差し



アメがいて良かったって言った

樽崎くん



まだピアスしてないんだ

髪も黒いまま

伸びてるけどね



タトゥーもコンタクトもこわいんだっけ?

してないのかな?



「ん?なに?」



樽崎くんが私の視線に気付いた



「あ、あのね…
アメオ、元気かな…って…
私、何度か公園見に行って…

誰かに拾われて幸せに暮らしてたらいいな…
って…
ずっと…ずっと…心配で…」



「山咲、泣いてる?」



この10年

1番辛かったのは誰だろう



この10年

1番幸せだったのは誰だろう



いろいろ考えたら

胸が熱くなった



「泣いて、るよ…
だって…だって…」



「フ…そんなに心配してた?」



「樽崎くん、今、笑った?」



「笑って…笑ってねーよ
なんか、嬉しかったから…
山咲がそこまでアメのこと考えてくれてたの

ありがと…」



樽崎くんの大きな手が

私のことも撫でてくれた



「うん…

アメオ…
アメ…元気でよかった…」



アメオを抱きしめた



ニャー…



女の子だったアメオ



あの時

小さくてすごく軽かったのに…



重くなったアメオを抱いて

10年間

幸せに暮らしてたんだな…って

私も幸せな気持ちになった



ここにいたんだね

よかった



私を撫でてくれた

樽崎くんの手は

優しかった



この優しい手に抱かれて

大きくなったんだね