「母親が、亡くなったんだ」
え…
「お母さん…が…?
樽崎くんの、お母さん?」
やっぱり
聞いたらダメな事だった
「入院してすぐ亡くなった
…
それで、学校行けなくなった
…
ダッセーよな…
ショックていうか
オレ、もともと学校のテンション苦手で…
…
友達にも心配かけたくなかったし
心配なんかしてなかったかもしれないけど…
…
なんか、行けなくなった」
そーだったんだ
みんなは知ってたのかな?
先生言ってなかったし
私の耳には入ってこなかった
「あの…
知らなくて、ごめんなさい
…
心配だったよ、私」
私は
心配だった
どんな理由でも
樽崎くんが
学校来なくなって
「そっか…
山咲が心配してくれてるとは思わなかった」
私は
友達じゃなかったもんね
でも
ずっと
毎日
心配だったよ
樽崎くん
きっと
辛かっただろうな
私の親が離婚した時とは
比べ物にならないくらい
何も言えなくて
腕の中のアメオを抱きしめた
「まぁ、もぉ10年経ったし…
アメいるし…」
樽崎くんが
私の腕の中の
アメオを撫でた
大きい手
アメオの頭をスッポリ包んだ
アメオは
目を細めて気持ち良さそうに
喉を鳴らした
「見せたかったもの…って…」
「そー、コイツ
ただそれだけ…
こんなことで呼んでごめん」
「ただそれだけ…じゃないよ
ありがと…樽崎くん
…
良かった…アメオ…
元気で、良かった
アメオ…良かったね
…
きっとアメオ、幸せだったよ
樽崎くんに飼ってもらえて…
…
元気なアメオ見れてよかった」
アメオがいなくなった時も
心配だった
誰かに拾ってもらったのかな?
ちゃんと生きてるかな?
冬はどぉしたかな?
ここにいたんだ
よかった
「うん、オレも
コイツいて良かった
…
お礼言わなきゃいけないのは
オレの方かも…
…
アメ…ありがと…」
樽崎くんは優しい顔をしてた
懐かしい
公園の時の樽崎くんの顔だ
「あ!コイツさ
家で飼う時に病院連れてったの
そしたら、なんと…女だった」
「え!ウソ!
女の子?
…
ハハ…
そ~言われたら、そ~見えてくるから
不思議だね」
「だろ!
アメオじゃなかった
今、山咲がアメオって呼んで
懐かしいな…って思い出した
ごめんな〜、アメ〜♡」
懐かしいな…
樽崎くんが
山咲って呼ぶのも
懐かしいよ
それにしても
樽崎くん
すごい溺愛してる
彼女にも
こんな優しい顔するのかな?
彼女には
きっと
もっと優しい顔かもしれない



