また今日も
同じ方向に歩いた
引っ越したって嘘をついて
反対方向からめちゃくちゃ遠回りして
帰ろうかな…とか、考えた
でも嘘がバレたら
こわい
「あちー…」
樽崎くんが暑そうに
学ランのボタンを開けてパタパタした
なんか
爽やかな匂いする
中学3年生
部活のない放課後
私はだいたい図書室で時間を潰してた
最近は特に
樽崎くんと帰りが重ならないように
なのに
なんで一緒?
「階段で鬼ごっこしてたら
先生に怒られた
今度、山咲も一緒にやる?」
「や、やりません」
「ハイ!敬語!」
樽崎くんが私に顔を近付けた
レンズのすぐ向こうに
異次元の人がいる
「ごめんなさい!」
咄嗟に目をギュッて閉じた
「オレって、そんなこわい?」
「こわく、ない…」
ホントは
こわくて見れない
目つきじゃなくて…
「山咲、こわそうじゃん
ごめん…」
だって
こわいもん
ドキドキする



