家に帰って

あの時

楢崎くんに貸した本を探した



親が離婚して

引越した時も



就職して

独り暮らしを始めた時も

なんとなく捨てれなかった



中にそのまま

しおりが挟まってた



『ありがとう ごめんね』



中学生の樽崎くんの文字



樽崎くん

この本

読んだのかな?



私は

樽崎くんが貸してくれたCDを

聴かないまま返した



どんな曲だったのかな?



きっと樽崎くんは

私を知ろうとしてくれてたのに



私は樽崎くんを

知るのがこわかった



あの時の私には

よくわからなかったけど



大人になった今なら

なんとなくわかる

あの時の私の気持ち



知ったら

きっと



樽崎くんを

どんどん好きになってしまうから



私が好きになったらいけない人

異次元の人だったから



知るのが

こわかった



懐かしい本を

久しぶりに読み返した



今、あの時に戻れたら

私は

どぉしてるだろう