この恋は、『悪』くない。


私と森谷さんが先に席に通されて

少し経って



「いらっしゃいませ〜」



樽崎くんが店に入って来た



あー…

最悪



気不味すぎる



「澤村さん、知り合いなの?
さっきの人たち」



「隣のビルの工事の人達ですよ
帰りに一緒になって挨拶するくらいです」



「へー…
あーゆー人たち
澤村さんタイプなのかと思った」



「あーゆー…って…?」



「厳つそうでちょっと悪そうな…
一見話し掛けにくい」



「森谷さん話してたじゃないですか」



「ラーメン好きな人には悪い人いないから」



あー、そーですか



ラーメン好きって言っても

一般的に好きなレベルで

森谷さんの好きとは違うと思うけど



「森谷さんの彼女になったら
デートはいつもラーメン屋さん巡りですか?」



「さぁ、それはどぉかな…
なに?澤村さん、立候補?」



「いえ…」



そんなわけない



「澤村さんは?
どんな人がタイプ?」



「え、私は…」



考えたことなかった



なんとなく

席から見える

樽崎くんが気になった



今日は伸びた髪を結んでた



ここからでもなんとなく見える

切れ長の二重の目



「今まで付き合ってきた人は?どんな?」



「特に、タイプとかなくて…
たぶん、私を好きって言ってくれたら…」



大学の時に

初めて彼氏ができた



好きって言ってくれたから

付き合った



すぐ別れちゃったけど…



その後付き合った人たちも

私を好きって言ってくれたから

付き合った



たぶん私も

好きだったから付き合ったんだけど



ホントに

好きだったのかな?





1年続いたことはなかった



オレ、好きかも…

山咲のこと、好きかも…



あの時は

ビックリして

答えられなかった



「オレも好きだけどね
澤村さんのこと
じゃ、付き合ってくれるの?」



え…



「味噌ラーメンのお客様」



「あ、はい!」



「今、はいって言ったよね?」



「え、それは、味噌ラーメン…」



「チャーシュー麺のお客様」



「はい

ハイ、澤村さん、箸…」



「あ、スミマセン」



森谷さんから割り箸を受け取った



「早く食べないとのびるよ!」



「はい、いただきます」



「考えてみてよ
オレのこと…

さっきの
冗談でも軽い話でもないから…」



「はい…」



「いただきまーす」