異次元の人と
同じ方向に
並んで歩いた
「山咲、そんな端歩いてたら側溝落ちるよ」
「は、はい…」
なんなら
落ちても…
いなくなりたいくらい
緊張する
何話していいか
わかんない
真っ直ぐ歩けてるかな?
「山咲、今回のテストよかった?」
「いえ…そんなに…」
「合計点400いった?」
「一応…」
「さすが!
オレ、テスト勉強したことない」
真面目にやってる私が
バカみたい
「山咲、高校どこ受ける?」
「え、私は…まだよくわからなくて…」
話が
広がらない
「いいね、選べるヤツは…
オレは勉強嫌いだから、工業高校行く
スーツ着てする仕事とか
向いてないと思うし…
まぁ、とにかく勉強したくない」
樽崎くん
頑張って会話してくれてる
私も頑張らなきゃ
「ご、合計点、何点だったんですか?」
「んー…たしか…358」
勉強しないで?
地頭がいい人ね
ちょっと勉強したら
志望校の選択広がるのに
頑張らないんだ
「へー…すごい、ですね」
「すごい?
ぜんぜん山咲に敵わないじゃん
…
で、なんで山咲オレに敬語なの?」
「え…あ…」
睨まれた
こわい
「なんか、緊張して…
…
あの…なんでいつも、睨むんですか?
私、何かしましたか?
それなら、謝ります」
「え?」
あ、焦って余計なこと言った
ごめんなさい
殺されるかも…
「そ、それで、ちょっと、こわくて…
なおせるところあったらなおすので
睨まないでください」
あ、どーしよ
もぉ学校行けないかも…
「え、それならオレが謝る
ごめん
オレ、視力悪くて…
よく見ようとすると目つき悪くなる
オレがなおすわ」
よく見ようとすると…
よく見ようとしてたの?
私のこと
私の存在なんて
知らないと思ってた
「だから、山咲も敬語やめて」
「敬語…ですか?
あ、はい…
あ、気をつけます…
あ…えっと…頑張ります…」
「フ…山咲、ビビりすぎ
そんなこわい?オレ
…
黒板の字もよく見えねーし…
でもメガネ似合わねーし…
コンタクトにしようか迷ったけど
オレ痛いの苦手で…
目の中になんか入れるなんて、こわすぎる
…
みんなピアスとかタトゥーとか言ってるけど
オレ絶対ムリ!
金髪とかブリーチとか
毛根死ぬくらい痛いと思うし…
絶対しない
…
歯医者とか注射とかもムリだから…」
へー…
ヤンキーにも
こわいものあるんだ
「今、笑った?山咲」
「え、笑って…」
笑った
だって可愛くて
「山咲の笑い方、可愛いね」
「え…」
可愛いと思った人に
可愛いと言われた
しかも異次元の人に
「危な!」
側溝に落ちそうになって
樽崎くんに腕を掴まれた
ずれたメガネを直したら
レンズ越しに目が合った
恥ずかしくて
すぐに目をそらした
「フ…山咲の笑い方、なんか、和む
アイツら、いつもうるせーから…」
うん
私もうるさいの苦手だけど…
樽崎くん
いつもグループの中心にいるのに
そーいえば樽崎くんて
あの中にいるけど
そんな喋ってない
樽崎くん中心に集まってるから
樽崎くん筆頭に
うるさいメンバーだと思ってた
自然と
人が集まってくる人って
いいな
きっと樽崎くんは
無意識なんだろうけど
なんか
わかるかも
樽崎くんの魅力
「じゃ、オレこっちだから…」
「あ、はい…
あ、うん…」
「フ…オレも睨まないように気をつけるわ」
樽崎くんも
笑った
「…うん…」
笑い方、可愛いね
なんか、和む
そんなこと言われたら…
「じゃ、また明日!」
「は、う、うん…明日…」
もっと
息ができなくなった



