この恋は、『悪』くない。


アメオの飼い主は決まらないまま

どんどん冬が近付いていく



ニャーニャー…



「コイツ、大きくなったと思わん?
だって、最初は
オレの顔より小さかったよな?」



樽崎くんが

自分の額に乗せて見せた



ニャーニャーニャー…



そっか

熱をはかるのに

私が樽崎くんの額に乗せたんだ



樽崎くんの咳も

いつの間にか出なくなってた



放課後は

図書室じゃなくて

アメオのところに来るのが日課になった



給食の牛乳を持って



「山咲、牛乳飲まないと
カルシウム足りないよ」



「うん…」



「背、伸びないよ
身長いくつなん?」



「148」



「ちっちゃ…
フ…アメオの方が大きくなるんじゃね?」



樽崎くんが笑った



ニャーニャー…

私の腕の中でアメオが鳴いた



「樽崎くんは?何cm?」



「んー、春の身体測定172ぐらいだったけど
また制服小さくなった気する
もぉ卒業なのに制服買ってとか
親に言いにくいし…
でも卒業式、制服小さいのダサくね?
後輩からボタンくださいとか言われなそー」



「樽崎くんのボタン欲しい人
いっぱいいるんじゃない?」



「ん?なんで?」



かっこいいから…

なんて言えない



「なんとなく…
でも、こわそうで声掛けにくい」



「フ…なんじゃ、そりゃ…
そぉ言えば
山咲いつの間にか敬語じゃなくなったよな
オレのこと、もぉこわくない?」



「ん、うん…、たぶん…」



毎日公園に寄って

アメオに会う



毎日公園で

樽崎くんと話す



「フ…たぶん…て…」



樽崎くんは毎日

笑ってる



優しい顔で



少しずつ慣れた



いつの間にか

敬語も自然と出なくなって



いつの間にか

わりと何でも言えるようになった



まだ少し

緊張するけど



「あ、山咲、予約しとく?
今なら好きなボタン予約できるけど…」



「え…」



「今、山咲
頼まれてもいらないって顔したね」



「え…したかな?」



今のは答えに困った



「うん、山咲迷惑そうだった
ボタン全部余ってるとかカッコ悪いじゃん
もらってくれる人いなかったら
山咲もらってよ」



樽崎くん

そんなこと気にするんだ



「うん、じゃぁ、余ってたら…」



「控え目だね…
ま、いらねーよな
どーでもいいヤツのボタンなんか」



「そんなこと…
そんなことなくて…
私なんかが樽崎くんのボタンもらうとか
勿体なすぎて…」



「フ…」



今の笑顔

何?



照れた?



いつの間にか

同じ世界にいる気がして



でも

綺麗で眩しくて



やっぱり

違うんだ…って

目をそらしてしまう



どーでもいいヤツなんて思ってない



私なんかがもらったら

ダメなボタンだから

もらえないよ