「沙和…
これ以上泣いたら
身体に負担かかるから…

もぉ、いいよ
もぉ、大丈夫」



いつも答えられない



楢崎くんは

ちゃんと言ってくれたのに…



臆病で

ぜんぜん変わってない

あの時の私と



樽崎くん

あきれるよね



こんな私を

ずっと好きでいてくれたなんて…



ホントに

ごめんね



「沙和、こわがってたら
元気な赤ちゃん産めないだろ」



え…



樽崎くんの大きな手が私のお腹を包んだ



「沙和、妊娠してた?」



私が言おうとしてた事を

樽崎くんに聞かれた



「…んーー…ぅん…」



頷いたら

止めようとしているはずの涙が

もっと溢れた



胸に支えていた言葉を

樽崎くんが

掻き出してくれた



自分で言えなかった



このことを

樽崎くんが知ったら



樽崎くんは

どんな反応するかな?



それがわからなくて

想像できなくて



こわかった



「ひとりで不安だっただろ
心配だっただろ

ごめんな…」



この声に

安心する



「…んーん…

なんで…
なんで、わかったの…?」



「オレ、占い師より当たるから…

フ…手相はみれねーけど…

沙和のこと
毎日見てたらわかるし
毎日触ってるからわかるよ

どこの占い師が30過ぎたら…って
言ってたかわかんねーけど…

沙和のこと
今より幸せにするって自信あるし…

沙和だけじゃなくてさ
家族が増えたら
みんなで幸せになろ

子供、3人だっけ?
5人だっけ?

沙和が思い描いてる結婚、家族

その隣にいさせてよ

ひとりじゃないから…
こわくないよ

占いより明確に
オレのビジョン、できてんだけどな…」



樽崎くんが

私のお腹に手をあてた



温かくて

優しい手



大好きな

大きい手



「ここに、いるの?
オレと沙和の、命…」



「…ん…」



「オレのこと、こわい?
また沙和のこと、こわがらせた」



樽崎くんの指が

私の涙を拭ってくれた



違う



「楢崎くんがいるから…こわくない
ひとりじゃ、ないから…こわくない」



私がいつも

勝手に自分でかかえて

不安になって

こわがってるだけ



いつも樽崎くんは

こうやって

受け止めてくれるのに…



「沙和…

ふたりなら少しは不安じゃないかもしれない

ふたりなら幸せも倍かもしれない


オレのこと、信じてみる?」



私は

この人に

甘えてもいいのかな?



自分の気持ちを

相手に伝えるのが苦手だった



この人もきっと

得意ではないと思う



なのにいつも

私にちゃんと伝えてくれる



この人とずっと一緒にいたいと思った



樽崎くんと…



「んーーー…

信じる…

樽崎くんのこと、信じる…


私と、結婚してください」



樽崎くんと

未来を

将来を

共にしたい



人を愛することを

教えてくれた

この人と



「フ…逆プロポーズ?


はい、喜んで…

沙和、幸せにする
絶対、幸せになろう」



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待ってた



今日も優しい

キスをしてくれるのを