この恋は、『悪』くない。


ニャー…



アメが樽崎くんの腕から

私の足元にきた



「アメ、オレより沙和の方がいんだ
しばらく一緒に寝てなかったから
嫌われたかな…

それとも
さっき言ったこと、アメに通じたかな…」



さっき言ったこと

ん?



アメより好きな子できたかも…



「ハハ…
アメは、樽崎くんの言葉がわかるんだね」



「フ…長い付き合いだからね

沙和には、通じた?

沙和には、伝わった?」



私には…



答える前に

樽崎くんの腕に抱き寄せられて

私と樽崎くんの間にできてた隙間が埋まった



メガネが

揺れた



恥ずかしくて

うつ向いた



「フ…伝わってねーかな?

アメより…好きだよ…」



優しい腕から

伝わってくる

優しい声



「ん…ホントに?」



さっきのは

私?



「やっぱり、伝わってなかった?」



アメより…



樽崎くんが

どれだけアメを大切に想ってるか

たぶん1番私が知ってる



凄く大事にしてるの知ってるからこそ

信じられなくて



知ってるからこそ

嬉しくなる



樽崎くんは

そんなに私のこと

想ってくれてるんだ



だけど…

樽崎くんは



今まで付き合った女の子にも

そんな感情を抱いたんだろうな



この期に及んで

自分に自信がないから

そんなことを考えてしまう



樽崎くんは

モテるから仕方ないのに…



アメより

そっちに嫉妬する



「伝わってないわけじゃないけど…」



「フ…伝わったわけでもなさそうだな

どーしたら伝わる?」



樽崎くんに抱かれた肩が

熱くなる



「あのね
不安になる

樽崎くんがこわいんじゃなくて…

自分に自信がなくて…」



「沙和は、オレのこと、どぉ思ってんの?

オレも自信ないよ

不安だよ

沙和は
オレでよかったかな…

沙和のこと
幸せにできてるかな?って…」



樽崎くんも

不安なの?



私と

同じ気持ちなの?



それは

私がちゃんと

伝えないから



「樽崎くんのこと、好きだよ

だから…

だから…」



好きだから

どーしたらいいか

わからない



「沙和…」



ーーーーー



また返事をする前に

樽崎くんにキスされた



少しメガネが邪魔した



レンズ越しに

見える樽崎くんは

真っ直ぐ私を見てる



私を抱きしめる腕

私にキスした唇



さっきまで無邪気に笑ってた樽崎くんが

急に大人の男性になる



でも

変わらない

優しい眼差し



あー…

好きだな





樽崎くんが

好きすぎて

こわいんだよ



「山咲…」



見えてるのは

大人になった樽崎くんなのに



山咲…

そう呼ばれて



気持ちは

あの頃のまま

純粋



山咲のこと、好きかも…



「樽崎くん…

私…

樽崎くんが、好きなの…」



あの頃



何も知らなかった

嫉妬とか

穢れとか



恋も

よく知らなくて



ただ

樽崎くんのことが心配で

樽崎くんのことが知りたくて

樽崎くんがいなくなったら嫌で



樽崎くんのことを考えると

こわくなる



大人になった



それが恋なんだって

やっと気付いた



「オレも…

山咲のこと、好きだよ」



あの時の

続きみたいに



ーー

ーーー



樽崎くんは

キスした



「沙和、こわくない?」



樽崎くんが

また聞いてくれる



「…こわいよ…

こわくても…好きなの…

好きだから…こわいの…

大好きだから…樽崎くんが…」



自分に自信がなくても

樽崎くんがモテても

樽崎くんと違う世界にいたけど



私は今

樽崎くんが好きだよ



ーーーーー



樽崎くんにキスしたら

優しくベッドに倒された