この恋は、『悪』くない。


ピピピ…



38.2



「やっぱり…」



「寝たら治る」



「ごめんね
夕飯、もっと違うのにすればよかった」



今日は私の食欲が出たから

カツカレーにした



美味しいと思って食べてたのは

私だけか



「うまかったよ
明日もアレでいい」



「明日は、うどんとかにしよーか?」



「沙和が作るのなら、なんでもいい」



ゴホ…ゲホゲホ…



「ごめんね」



「なにが?」



「移して…」



「フ…
だから、言ったじゃん
人に移すと治るって…

沙和は?
もぉ完全によくなったの?」



「うん…」



また

キスを思い出して

ドキドキした



「薬飲んで寝たら治るって
誰か言ってたから…
寝るわ、オレ」



ゲホゲホ…



「私に移したら、治る?」



「は?」



「だから…私に移したら…」



この前のは

キスじゃないんだよね?



じゃあ私も

樽崎くんの風邪をもらうから…



ベッドで横になってる樽崎くんの顔に

顔を寄せた



同じことしたら

移るの?



「私に、移してよ」



樽崎くん

やっぱり

熱い



まだ触れてないのに

熱を感じる



それとも

私が熱いのかな?



「フ…
沙和、移ろうとしてんの?
残念でした
オレの風邪が沙和の風邪だったら
沙和はもぉ免疫できてるから
移んねーし…フ…」



ゲホ…ゲホ…



樽崎くんが

私に背を向けた



躱された



「そっか…
じゃあ、なんか、私にできることない?
冷えピタ持ってこようか?
あと、なんか…」



「沙和、寒い…」



樽崎くんが布団の中で

身体を丸めた



「じゃあ、もっと布団掛けようか?
私の部屋から持ってくるね!」



「いい…」



「じゃあ、もっと服着る?
樽崎くんいつもᎢシャツだけど
それじゃ寒いよ」



「いいの
寝る時はいつもこのスタイルだから…

あー…熱いのに、寒いー…
寒いのに熱いのか…
わかんねー

沙和…来てよ…」



「ん?いるよ、ここに」



「うん…
もっと、近く…」



さっきは

私が近付いたら躱したクセに



「近くに、いるよ

樽崎くんが寝るまで、ここにいるね」



ベッドのすぐ横に座った



「そこじゃ、遠い
もっと、近く…」



「ん…?」



樽崎くんの手が伸びて

私の頬を触った



温かくて

大きい手



今日は

樽崎くんの手が熱いのかな?



「沙和、来てよ…」



樽崎くんに引き寄せられて

樽崎くんのベッドに入った



樽崎くんの匂い

樽崎くんの温もり



温もりじゃなくて

今日は熱い







背中



樽崎くんの手が

私をなぞった



触れられた部分が

熱い



こんな時に

ドキドキしてしまう



樽崎くん

具合悪いのに



こんな時に

こんな気持ちでごめんなさい



「沙和…」



その声で

耳元にまで熱を持つ



「なに?大丈夫?」



「寒いから…温めてよ…」



「ん、うん…」



自分の吐息も熱かった



樽崎くんの背中に

そっと手を回した



樽崎くんは寒いって言うのに

熱かった



私の腕の中で

熱を放つ



「沙和、温かい…」



私も

熱くなる



このまま溶けてしまいそう



「うん…
早く治るといいね」



ゲホゲホ…



「…ごめん…」



「んーん…
咳、辛そう

なんか、思い出す
懐かしい…

樽崎くん、咳してたよね?
中学の時」



「咳?…してたっけ?」



「うん、してたよ
辛そうだった」



「沙和、心配してくれてた?」



「うん、してたよ」



「フ…ホント?その時知りたかったわ
沙和の気持ち」



私の気持ち



あの時

私は…



「あの頃のオレ
めちゃくちゃ純粋だったな…って思う」



「うん
咳してても、アメのこと心配してたよね」



「フ…アメのことじゃなくて…
沙和のことなんだけど…

あの時のままで、いたかったな…」



「あの時の…?」



「ガキだったから
何も知らなかっただけかもしれないけど
けがれなく純粋だった

沙和に、また会えるってわかってたら
何も知らなくてよかった

好きでもない女のキスマーク付けて
帰って来て

沙和に見られて
顔色伺って

そのクセ
沙和が他の男と話すだけで
嫉妬とかして

幸せになってほしいなんて
綺麗ごと言って…

オレじゃない誰かと幸せになったら
絶対嫉妬するのに…

自分は
ちゃんと恋愛できなくて…
辛くて…

フ…バカみたいな大人になった

って、何言ってんだろ、オレ
熱で頭おかしくなった」



バカみたいな大人



そぉかな?



「今は…
今は、純粋じゃないの?

私のこと…」



やっぱり

そんなに好きじゃない?



悪く言ったら

遊ばれてる?




抱きしめてるのに


こんなに近くにいるのに



不安になる



「好きだよ
たぶん、あの時より、ずっと…」



腕の中の熱の塊が

もっと熱くなる



「ホントに…?」



「あ、やっぱり信じてなかった?」



「だって…」



「好きだったよ
沙和が山咲だった頃も

たぶんずっと好きだった

今はもっと好きだし

これからも…
大切にするから…

だから…

沙和…好きだよ…」



腕の中の塊が

熱を放って

柔らかくなった



ん?

樽崎くん?



寝た?



樽崎くんの熱い吐息が

胸に掛かる



沙和…好きだよ



寝言かな?



「樽崎くん、ありがと…

樽崎くんは
バカな大人じゃなくて…

あの時の…あの時のままだよ…」



樽崎くんはバカな大人じゃなくて…



「こんな私にも優しくて…

私も…
好きだよ…大好きだよ…」



私に向けられる気持ちは

あの時のまま

純粋なまま



中学生みたいだな…って

たまに思う時がある



それも含めて

私は

樽崎くんが好きだよ



無邪気な寝顔



樽崎くんの髪を撫でた



「…沙和…おやすみ…」



ん?

起きてた?



「おやすみ…
早く良くなってね」



なんか不思議だね



抱きしめてる樽崎くんは

中学生じゃなくて

もぉ大人の男の人になってる