「おまたせ…」
「ありがと」
いつものクセで
カバンから本を出しそうになる
「沙和のなに?」
「ん?チョコラテだよ
雑誌にオススメって書いてあったから…」
「ちょっと、ちょーだい」
「うん…」
あ…
樽崎くんの唇が
カップに触れた
こんなことで
ドキドキする
中学生みたい
私
デートみたい
デートだ
「あっちの席の方がよかった?
沙和、見てたから…」
「ん?そんなことないけど…」
「こっちの方が…」
うん
こっちの方が
目立たなくていいもんね
「沙和と近くなれんじゃん」
「え?」
「あっちの席だと離れるよ」
そーゆーこと?
「うん…そっか…」
「ダメだった?」
樽崎くんが
私を覗き込んで
近さを実感した
肩が触れてる
「ダメ、じゃないけど…」
それは考えてなかった
「こーゆーこともできるよ」
樽崎くんが私の手を握った
近くて
ドキドキして
熱くなる
「したくなかった?」
「か、考えてなかった」
想定外で
心臓が変な音する
「なんだ、オレだけ?」
カフェで
樽崎くんと
イチャイチャできるなんて
考えてなかった
「オレ、タバコ吸ってくる」
「あ…うん…
喫煙ルームあっちにあったよ」
私のせいだ
せっかく
やっと
恋人ぽかったのに…



