バイクが見えてきて
樽崎くんがポケットからキーリングを出した
ペアのキーリング
樽崎くんが選んでくれた
信じていいよね?
「樽崎くん…
…
私…
…
なんか、うまく伝えられなくて…
…
でも、樽崎くんのこと…」
バイクの前で
樽崎くんは
私が話すのを待ってる
何言ってんの?とか
思われてるかな?
どーしよ…
好きとかいう言葉は
樽崎くんは望んでないのかもしれない
「キーリング、ありがと
ホントに嬉しかったし、大切にするね」
ありがと
樽崎くんがそう言ってくれたから
私もそれでいんだ
恥ずかしくてヘルメットをかぶろうとした
「沙和…ちょっと歩こうか…
天気いいし…」
「うん…」
きっと私
耳も顔も赤い
うつ向いて
髪で顔を隠した
歩き始めたら
樽崎くんが
手を繋いでくれた
え…
ビックリして
繋がれた手を確認した
樽崎くんの手と
私の手だよね?
「うまく伝えられないけど…
こーしたかったんだろ?」
「え、うん…」
やっぱり
バレてた
「オレ、手とか繋いだことないから…」
今までの彼女とは
どーしてたんだろ?
「オレ、そーゆーのよくわかんねーから…
沙和がしたいと思ったこと言えよ」
意外
女の子に慣れてそうなのにな…
樽崎くん
繋がれた手から
ドキドキする
嬉しくて
調子に乗って
樽崎くんの腕に掴まった
「フ…なんなの?沙和」
「ダメ、ですか?」
「や…いんじゃないですか」
「ハハ…」
「フ…」
ふたりで
照れて笑った
私たち
カップルに見えてるかな?
「この前沙和が雑誌で見てたカフェ
近いから行ってみる?」
「え、デートみたい」
「デートだろ」
「うん、そーだね…ハハ…」
樽崎くん
ちゃんと考えてくれてたのかな?
嬉しくなる



