この恋は、『悪』くない。


お店から出て

樽崎くんは無言でバイクの方に歩いた



樽崎くん照れてる?

それとも怒ってるのかな?



愛してる



そんなこと

樽崎くんからは

これからも言ってもらえないかもな…



樽崎くんの背中を見て思った



言ってもらえるように

頑張ろう



「あの、ありがとう、樽崎くん」



樽崎くんの背中に言った



樽崎くんが振り返った



やっと私を見てくれた

お店でもぜんぜん私を見てくれなかった



私も恥ずかしくて

よく見れなかったし



「や…お礼言うのオレの方だし…
ホント感謝してる

ひとりでできると思って退院したけど
思ったより大変で…
沙和いてくれてよかった

入院してる間も
アメのこと世話してくれてて
それもスゲー助かったし

全部、感謝してる

一緒に住んでくれたことも
オレの彼女になってくれたことも

ありがと…沙和」



彼女っていう言葉が嬉しくて

なんか

泣きそうになった



彼女らしいことできてないし

ホントに付き合ってるのかな?って

はっきり言ってまだ不安



釣り合ってないかな?とか

いつも

周りの人の目線を気にしてしまう



「樽崎くん…
これからも…よろしくお願いします」



「フ…なに?改まって…」



私は…

樽崎くんのことが好きだし

樽崎くんの彼女になれたことが嬉しくて

樽崎くんと腕も組みたい



一緒にいると

どんどん好きになってく



樽崎くんは

ありがとうって言ってくれた

感謝してるって言ってくれた



彼女って言ってくれた



でも…



手を繋いでるカップルとすれ違った



いいな…

羨ましい



「沙和
行こう…」



「…うん…」



手は

繋いでくれない



きっと

見てたのバレた