この恋は、『悪』くない。


「沙和〜」



樽崎くんに呼ばれた



「沙和、家の鍵ある?」



「鍵?うん、あるよ」



バッグから鍵を出して

樽崎くんに渡した



樽崎くんは

鍵をキーリングに通して


「ハイ」


私に返した



「ん?」



「沙和のだよ
オレのも…」



樽崎くんも同じキーリングを持ってた



「え…」



「晴輝なんか言えよ
さわちゃん、ビックリしてんじゃん
しかも、ここで渡すな
プレゼントなんだからラッピングするよ」



「特にプレゼントとかじゃねーから…
ケガした時、世話になったから」



「え…うん…ありがと…」



そんなの

樽崎くんから貰えると思ってなかった



「晴輝、照れちゃって…
ちゃんと言えよ
ペアにした意味ないだろ

さわちゃん
コイツ、ふたりでいてもこんななの?」



「沙和、答えなくていいから!」



答えられません

こんななので…



「さわちゃん
晴輝、いつも言葉足りなくてゴメンね
オレが変わりに言ってやる

いつもありがと
大好きだよ、さわちゃん
愛してる〜」



「オマエが言うな!」



「晴輝が言わないからだろ」



「もぉこの店来ねーから」



「またのご来店お待ちしてます
さわちゃん、またね!」



「はい、また…」



「ありがとうございました〜」



慌ただしくお店を出た