「オレ、沙和のこと…
…
…
好きだから…」
なんの準備もなく
心に入ってきた言葉
好きかも…
じゃなくて
好きだから…
に変わってた
その言葉に
胸がギュッと掴まれて
苦しくなる
もっと速く鳴りたい胸の音を
掴むものが
邪魔をする
進みたくても
進めなくて
言葉にしたくても
言葉が出てこない
真っ直ぐ私を見て言ってくれた
樽崎くんの視線が
酷く痛い
辛い言葉とか
悲しい言葉じゃないのは
わかるのに
うまく受け止められない
喜んでもいいの?
私
「それ、だけ…
…
寝たら忘れろ」
樽崎くんの真剣な瞳が
髪で隠れた
忘れられないよ
忘れたくないよ
「ヤ、ダ…」
ヤダよ
樽崎くんが伝えてくれた
私への気持ち
「うん、ごめん…
沙和の嫌なことしないって約束したのに…
…
もぉ言わねーから…
沙和、困らせること
…
ごめん
困らせて…
…
ごめん
こわがらせて…」
樽崎くんは
こわくなんか
ない
こわがらせたのは
樽崎くんじゃない
私の気持ちを言っていいのか
わからなくて
こわかった
困ってるのは
忘れて…
そっちの方
そんなの忘れられるわけないよ
どぉしたら
いい?
「とにかく今日はありがと
いい1日だった
以上…」
いい1日
私の気持ちを言ったら
いい1日で終われなくなるのかな?
ホントに
いい1日だった?
樽崎くんは伝えるだけでよかった?
私の返事は
いらなかった?
「ヤダ…
忘れられない…
…
…
私も…
…
私も…
…
…
好きって、言ったら…?」
ちゃんと返事をしたかった
「え…?」
樽崎くんが拍子抜けした顔をして
私を見た
「そしたら…
忘れなくてもいい?」
「沙和、本気で言ってんの?
…
フ…同情とか、お世辞とか、
そーゆーのいいから!
…
気使われても嬉しくねーし…」
「本気だよ…
…
樽崎くんは、本気じゃなかった?」
「オレは…
オレは、本気だけど…」
樽崎くんが
また私を見て
目が合った
「私も、好きだよ
…
そしたら、どぉなるの?
…
それでも、忘れなきゃ?
…
もしかして、出て行かなきゃ?」
あ…
私も、好きだよ
今言う気なかったのに
言ってしまった
一生言う気なかったかも…
私が樽崎くんに
そんな気持ち抱くなんて
樽崎くんに知られたら
どぉ思われるか
こわかったから
「ん…ちょっと考えさせて…」
さっきは
忘れろって言ったのに…
今度は
考えさせて…って
変だよ
樽崎くん
やっぱり
私のことなんて
好きじゃないクセに



