この恋は、『悪』くない。


「オレ、沙和のこと…


好きだから…」



なんの準備もなく

心に入ってきた言葉



好きかも…

じゃなくて



好きだから…

に変わってた



その言葉に

胸がギュッと掴まれて

苦しくなる



もっと速く鳴りたい胸の音を

掴むものが

邪魔をする



進みたくても

進めなくて



言葉にしたくても

言葉が出てこない



真っ直ぐ私を見て言ってくれた

樽崎くんの視線が

酷く痛い



辛い言葉とか

悲しい言葉じゃないのは

わかるのに



うまく受け止められない



喜んでもいいの?





「それ、だけ…

寝たら忘れろ」



樽崎くんの真剣な瞳が

髪で隠れた



忘れられないよ

忘れたくないよ



「ヤ、ダ…」



ヤダよ

樽崎くんが伝えてくれた

私への気持ち



「うん、ごめん…
沙和の嫌なことしないって約束したのに…

もぉ言わねーから…
沙和、困らせること

ごめん
困らせて…

ごめん
こわがらせて…」



樽崎くんは

こわくなんか

ない



こわがらせたのは

樽崎くんじゃない



私の気持ちを言っていいのか

わからなくて

こわかった



困ってるのは

忘れて…

そっちの方



そんなの忘れられるわけないよ



どぉしたら

いい?



「とにかく今日はありがと
いい1日だった
以上…」



いい1日



私の気持ちを言ったら

いい1日で終われなくなるのかな?



ホントに

いい1日だった?



樽崎くんは伝えるだけでよかった?



私の返事は

いらなかった?



「ヤダ…
忘れられない…


私も…

私も…


好きって、言ったら…?」



ちゃんと返事をしたかった



「え…?」



樽崎くんが拍子抜けした顔をして

私を見た



「そしたら…
忘れなくてもいい?」



「沙和、本気で言ってんの?

フ…同情とか、お世辞とか、
そーゆーのいいから!

気使われても嬉しくねーし…」



「本気だよ…

樽崎くんは、本気じゃなかった?」



「オレは…
オレは、本気だけど…」



樽崎くんが

また私を見て



目が合った



「私も、好きだよ

そしたら、どぉなるの?

それでも、忘れなきゃ?

もしかして、出て行かなきゃ?」



あ…



私も、好きだよ



今言う気なかったのに

言ってしまった



一生言う気なかったかも…



私が樽崎くんに

そんな気持ち抱くなんて



樽崎くんに知られたら

どぉ思われるか

こわかったから



「ん…ちょっと考えさせて…」



さっきは
忘れろって言ったのに…



今度は
考えさせて…って



変だよ

樽崎くん



やっぱり

私のことなんて

好きじゃないクセに