この恋は、『悪』くない。


少し日が落ちるまで

公園にいて

家に帰った



家族

カップル

夫婦



そんな公園の風景に

私と樽崎くんは

不自然なふたりだった



帰る場所は同じなのに

なんだろう

この関係は



「今日さ
オレ、スゲー幸せだと思ったんだよね」



夕飯を食べならが

樽崎くんが言った



「あ、コーラ?」



「じゃなくて…

沙和が隣にいて…」



「ん…?」



今日の樽崎くん

どぉしたんだろう



ずっと変だよ



「沙和がいつか
ここからいなくなったら
ヤダな…って、思ったんだよね」



変だよ

振り回される



彼氏できた時は出てけって

樽崎くんが言ったクセに



また

試されてる?



「あ、わかった!
父親が娘を送り出す気持ち?」



冗談ぽく返した



この話は

ちゃんと真剣に話したら

ホントに出て行かなきゃいけなくなりそうで

こわくなった



「たぶん、違う…」



樽崎くんの顔が

翳った



笑ってよ

なに?



「大丈夫だよ
まだ当分お世話になるので…
その間はご飯作らせてください」



「飯の心配とかしてるわけじゃなくて…」



じゃあ

なに?



「じゃあ、彼氏できても
ここにいてもいいの?」



そんなこと言っても

彼氏なんて

できないよ



私は

出て行きたくなんかなくて



ずっとここに

ずっと樽崎くんの近くにいたいと思うのに



「いや…

彼氏とか…

沙和にできたら、嫌なんだ」



樽崎くん?

ホントに今日

変だよ



「それも、父親の娘に対する気持ち?

それとも、大家さんとして?
門限みたいに
この家に住むにあたっての決まりとか?」



「いや…
オレの気持ち

あのさ
これからオレの気持ち言うけど
気まずくならないでくれる?

聞いても
今までどおりでいいから…

別に出ていかなくていいから…」



「ん、うん…」



なに?



こわいよ

樽崎くん



心臓の音が

ゆっくり

速くなる