香水の甘い匂いで
視線を移した
のどかな公園には不自然な匂い
樽崎くんの視線も
同じ方を見てた
肩が出たニットを着た女性が
私達の前を通り過ぎた
ふーん…
やっぱりあーゆー女の人が好きなんだね
あの人が
樽崎くんの隣にいたら
お似合いなんだろうな
私は
公園に不自然なこの香りみたいに
端から見たら
樽崎くんの隣にいたら
不自然なのかもしれない
「あーゆー服って、下着つけてんの?」
「ん?」
「さっきの女の人みたいな服」
やっぱり樽崎くん見てたんだ
「うん、つけてるんじゃない?
男の人って、あーゆー服好き?
やっぱりあーゆーキレイな女性が好きだよね」
「や…引っ張ったら脱げそうじゃね?
顔なんて見てなかったし
沙和が着たらヤダな…って思って見てた」
「私が着たら?
うん、そーだよね…」
うん
着ないけど
うん
私には似合わない
わかってるよ
「あの人の彼氏とか
なんも言わねーのかな?
オレが彼氏だったらヤダけど…」
「なんで?」
「だってみんなに見られんじゃん
自分の女の裸とか…
まぁ、裸ではなかったけど…
裸みたいな格好してたら
みんなに見られんじゃん」
「うん、樽崎くんも見たもんね」
「沙和だって見ただろ
男に限らず、アレは目がいくだろ」
樽崎くん誤魔化してる
「ふーん…」
「フ…軽蔑した目で見んな
まぁオレは、
沙和の方がタイプだけど…」
そんなこと
思ってないクセに
今、目逸らして言ったもんね
「どーしたの?
樽崎くん、なんか変だよ」
「んー…変かも…
フ…事故の後遺症?」
「ハハハ…
そーかもね…
私の名前、覚えてるよね?」
「フ…覚えてるよ
…
沙和…
山咲、沙和…」
「ハハ…
久しぶりに呼ばれた
山咲って…
もぉ忘れてた」
ホントは
忘れてなんかない
山咲のこと、好きかも…
あの時の
声も
言葉も
全部憶えてる



