最近
樽崎くんの視線を感じる
テレビ見てる時
ボーッとしてる時
洗濯干してる時
ご飯作ってる時
ご飯食べてる時
今も見られてる気がする
きっと樽崎くんは
視力悪いから
見てるようで見えてないのかもしれないけど…
「できたよ!食べよっか…」
「この皿でいい?
オレ、盛るよ」
「大丈夫だよ
樽崎くんは、アメにご飯あげてよ」
「アメは、さっき食った
待ちきれなそーだったから…」
「じゃあ、樽崎くん座ってて…
私やるから…」
樽崎くんは
相変わらず
距離感が近くて
最近
松葉杖が外れてから
尚更近い
近くにいると
緊張する
だから
あっちに行っててほしい
「樽崎くんもお腹空いた?
待ちきれなかった?ハハハ…」
「沙和、メイク変えた?」
樽崎くんが
私の顔を除き込んだ
なんで
このタイミング?
近い
心臓もちません
「ん、変えてないよ
あ、樽崎くん、視力悪いもんね!」
私って
いつも
のっぺらぼうに見えてるのかな?
「や…オレ、コンタクトしてるし…」
「え!」
「フ…そんな驚く?」
「だって…痛いの嫌いって…」
「仕事してからコンタクトしてる」
え!
ずっと油断してた
「ほら、中学の時
沙和のメガネ借りて掛けたじゃん
スゲーいろんなもんが見えんだな…って
違う世界みたいだった
だから高校の時はメガネ掛けてた」
「樽崎くんが?」
「うん
違う意味で高校デビュー
なんか視界が明るくなった
大袈裟に言うと、世界が明るくなった」
「フフ…そーなんだ」
私が知らない
樽崎くん
どんな高校生だったんだろう
それより!
「え、じゃあ…ずっと見えてた?」
「え、ずっと…って?」
「今も見えてる?」
「うん、見えるけど…」
ずっと見えてた
油断してた
よく見えてないと思ってた
「なに?なんかダメだった?
沙和、今日いつもより頬赤いから
メイク変えたのかな…って…」
樽崎くんの手が
私の頬に伸びた
バッ…
手が触れる前に
避けてしまった
「…ごめん…」
樽崎くんが驚いて
謝った
あからさま過ぎた
だって
私も
ビックリした
「ん、ごめん…食べよ!
あ、じゃあ樽崎くん
コレ、テーブルに運んでくれる?
あと、サラダも…」
距離が近いだけでも
顔赤くなってるのに
触れられたらもたないよ
限界



