10時の約束が
コンビニでタバコを買って
家に着いたのが
9時だった
「ただいまー」
「おかえり
え、早くね?
まだ9時だけど…」
「うん、みんな2次会行ったけど…
…
ハイ、タバコ」
「あぁ、ありがと…」
テーブルに開けたばかりのタバコの箱があった
「もしかして
間に合わなくて自分で買って来た?
ごめんね、もぉ少し早く帰ってくれば…」
「いや…
この前、カートンで買ってたの忘れてた
しかも、最近あんま吸わないようにしてる」
「なんだ…」
「ごめん
せっかく早く帰って来てくれたのに…」
しかも
今日は晴れだったよ
私は
タバコのために早く帰って来たのかな?
なんか違う
たぶん
樽崎くんのもとに早く帰りたかった
樽崎くんに
試された気がした
「ちゃんと飲んできた?」
「うん、飲んできたよ」
「なんもなかった?」
「なにが?」
心配
してくれてるの?
「フ…
沙和って、ホント飲んでも変わんねーのな
甘えたり、わけわかんなくなったり
しねーのかよ
どんだけ真面目なんだよ」
真面目って
樽崎くんがタバコ買ってこいって言うから…
大家さんが朝帰りはダメって言うから…
甘えたり…って
誰に甘えるの?
樽崎くんに
甘えていいの?
真面目で
悪かったですね!
「なんだ…
じゃあ、朝帰りしてもよかったんだね、私」
フー…
樽崎くんは黙って
タバコの煙を吐いた
聞こえなかった?
ズルいよ
「沙和が買ってきてくれたタバコ
大事に吸おう」
「なんで?
同じタバコなんだから
みんな同じでしょ」
「沙和の気持ちが入ってるから…」
私の気持ち
樽崎くんを好きな気持ち
気付かれる気がして
ドキドキした
「沙和…」
「ん…、なに?」
気付かれた?
「シャワーしてきなよ
他のタバコの匂いがして
なんか、嫌だから…」
「うん…そーだね…
ごめんね
シャワーしてくるね」
いっそのこと
気付かれたらいいのに…って
思っちゃったよ
酔ってるね
私
気付かれたら
ここにいれなくなるよ



