この恋は、『悪』くない。


「さっきから
時計気にしてるけど
澤村さん、男できた?」



「え、そんな…」



無意識に

時計見てた



「オレの送別会なのに失礼じゃない?」



「あ、すみません」



「ハハ…澤村さんて正直だよね
嘘つけないタイプだよね
だから一緒にいるとラク

先に帰りなよ
みんなと一緒に出ると2次会つかまるよ」



「え…でも…」



「待ってる人、いるんだろ?」



待ってる

たしかに

待ってるけど…



私じゃなくて

タバコだし



「今度、カフェで会ったら声掛けてよ
たぶん、オレ
ひとりでスイーツ食べてるから

その時、もし澤村さんが彼氏といたら
前に一緒に働いてた人で
私のこと好きだった人…って
彼氏に紹介しろよ!」



「あの…彼氏とかじゃないんで…」



「同棲してるってウワサ聞いたけど」



「同棲とかじゃなくて!
あ…スミマセン
ホントに違うので…」



ムキになってしまった



「同棲じゃないけど、一緒に住んでて
彼氏じゃないけど、好きなんだろ」



「ん…」



間違ってない

認めていいのか

言葉につまった



「澤村さんは
何とも思ってない男と
一緒に住めるような人じゃない」



そーかな…



樽崎くんだから

一緒に住んだ?



「彼は、どんな気なのか知らないけど…
もぉ、やったの?」



「え!」



森谷さん



なんて?



「シー!
今のは完全にセクハラ
すみません
認めます」



「ホント、そんなんじゃ…
何もないです」



「そっか…
大切にされてんじゃん」



それとも違う気がするけど



「ただ、女として見られてないだけです」



「そーかな?
今ごろ、心配してんじゃないの?
変な男に誘われてないかな…って」



あ!

タバコ



「また、時計見ただろ

ま、元気で…
お互い頑張ろう」



樽崎くんは

私が心配とかじゃなくて

きっと自分のタバコが無くなるのを

心配してる



「森谷さんもお元気で…
お先に失礼します」