この恋は、『悪』くない。


「沙和、なんの雑誌見てんの?」



「ん?
新しくできたカフェだって
ここも休みの日に
ひとりで行きやすいかな…って」



樽崎くんの家に住んで

1週間



「ひとりじゃねーと、ダメなの?」



「んー…
仕事してから
ひとりでカフェで本を読むのが
休日の日課みたいになってる
ハハ…日課っておかしいね」



しばらくひとりだったから

まだ慣れない



帰ったら人がいること



それが

樽崎くんだっていうこと



「へー…コレ、どこのカフェ?」



「ん、ここからわりと近いみたい」



慣れない

この距離



樽崎くん

視力が悪いからかな?



いつも

すごく近い



触れてないけど

体温を感じる距離



いつも

緊張して

息ができなくて



胸が苦しくなって

離れたくなる



「ん?」



「ん?なんか、暑いかなーって…」



距離を取ったのバレた



「オレは暑くないけど」



「うん、私が厚着してるから…」



上着から出る指先は

冷たいのに

顔が熱る



「樽崎くんは休日何してた?」



「何してたかな…
今はケガしてるからどこも行けねーけど…
友達と飲みに行って…」



そーだった

飲んで記憶なくて

女の子と寝て

朝帰りしてた



「アメがいるから帰らなきゃ…って
いつも頭のどっかにあって…
けど、オレがいなくても
怒んねーし、許してくれる
なー…アメ…」



都合のいい女みたい



樽崎くんがアメを抱き上げて

喉を撫でた



ニャー…



アメは

気持ちよさそうに

目を細めた



人を好きになるって

こーゆーことなのかな?



絶対服従というか

束縛しない

許す



それができなきゃ

アメみたいに

樽崎くんに愛してもらうことはできないのか…



モテる男の彼女は辛いね

アメ



ーーー



アメにキスする樽崎くん



何度見ても美しい



アメ

幸せそう



「樽崎くん、アメのこと溺愛してるね
アメもきっと樽崎くんが大好きだよね
アメが人間だったらよかったでしょ?」



そしたら私は

ここにいれない



そしたら私は

どんな気持ち?



「んー…

アメには
オレの弱いとこもダメなとこも
全部見せてきたけど
オレのこと嫌いにならないし
いつもそっと隣にいてくれる

文句も言わないし
かと言って人間の女と違って
襲ってこないし…フ…

アメが人間だったら
最高の女だな…って本気で思ったことある
抱きたいって思った夜もある

フ…ヤバイな…オレ
沙和、今、軽蔑した目で見ただろ」



「見てないよ!」



見てない



樽崎くんにとって

アメは

最愛の存在



きっと

この10年



樽崎くんが辛かった時も

樽崎くんが笑った時も

アメは側にいた



樽崎くんとアメしか

わからない何かで

繋がってる



私の気持ちなんか

ぜんぜん敵わない



「アメ…愛してるよ…」



ーーー



美しくて

どこか

いつも

哀愁を感じる



そんな樽崎くんとアメに

いつも見惚れる



嫉妬でも

僻みでもなく



なんとも言えない感情



軽蔑なんてしないよ