「昨日のことだけど…」
「昨日のことなんだけど…」
一晩寝て考えた
ウソ
寝てない
「あれからまた考えたんだけど…」
「帰ってから考えたんだけど…」
考えたら
一晩
寝れなかった
「沙和、先にどーぞ…」
「どーぞ…樽崎くんから…」
「えっと…」
「あの…」
「オレ…」
「私…」
「事故で頭おかしくなったかも…」
「昨日よく寝れなくて、変かも…」
「フ…ハハ…なに?」
「なに?樽崎くん…」
「「おちつこう」」
「うん、沙和がね」
「樽崎くんもね」
「フ…ハハハハ…」
「ハハハハハハ…」
ふたりで笑ったら
少し和んだ
「あの…樽崎くん
昨日の話なんだけど…」
「あぁ…うん…」
「いろいろ考えたんだけど…」
「うん…オレも考えた
やっぱり…」
「次のアパートが決まるまででもいいので…
樽崎くんのケガが治るまででもいいので…」
「え…うん…」
「お願いします」
「え…?」
「ダメ?だった?」
「沙和、本気?
よく考えた?」
「うん…よく考えた、よ
え…?」
なんか
ダメだった?
樽崎くんの反応が
想像してたのと違った
「や、昨日、ホントは
沙和来ない予定だったじゃん
それで、オレ、
考えがよくまとまってないのに
あんなこと言って
沙和、絶対引いただろうな…って…」
「え、じゃあ…
あの話は…なかった事に?」
「や!
なかった事にしてもらおうと思ったけど
沙和がよかったら…」
「うん…よろしくお願いします」
「うん…
あくまでも
部屋を貸すだけだから
プライベートはプライベートだから…
お互い干渉しないことにしよう
…
あと、沙和の嫌がること絶対しないし…
…
そろそろオレ、リハビリがてら
2階の部屋戻るから
アメがいる部屋使えよ
片付けとくから…
…
今までどおり
洗濯は自分でするし…
飯もずっと沙和が作ってくれてたけど
オレのことはぜんぜん考えなくていいから…」
樽崎くん
なかった事に…って言ったけど
「いろいろ考えてくれたんだね」
「まぁ、一応、大家になるわけだから…」
「フフ…大家さん
家賃は今までのアパート代プラス
水道光熱費…あと食費…それから…」
「あ、いいから
どーせ空いてる部屋だし
アメも喜ぶと思うから…」
「そんなー…よくないよ
こーゆーのはちゃんとしないと…」
「沙和に借りを作ってるのはオレだし
ホント今まで助かったし
これからもいてくれるだけで…
ホントに金いらないから…」
「じゃあ、借りが精算できた時に
更新お願いします
そしたら、その時は…」
その時は
家賃が発生するか…
出ていくか…
これからもいてくれるだけで…って
これから…って
どれくらいかな?
樽崎くん
樽崎くんのケガが治ったら
私は必要なくなる
「フ…借りなんて
たぶん、オレは沙和に
一生返せないよ
…
だから
沙和が出て行きたくなるまで
いてもらっていいから…」
一生
樽崎くん
一生って
生まれてから死ぬまでの間だよ
わかってる?
私が一生出ていかなかったら
迷惑でしょ
「…うん…ありがと…」
そんなことはないってわかってても
嬉しかった
でもいつか…
「じゃあ、お世話になる間はご飯作るね」
樽崎くんにご飯を作ってくれる人が現れて
私はきっと…
「フ…うん…ありがと
オレがじいさんになっても作ってよ」
そんなこと…
ホントになったら嬉しいなって
思ってしまう
「…うん…」
次の住処が決まった
樽崎くんの家
樽崎くんと
同じ屋根の下
(同棲ではありません)



