この恋は、『悪』くない。


「沙和…一緒に住まない?」



樽崎くんの言葉に

耳を疑った



私がこわいと思っていた言葉と

まったく真逆な言葉に

戸惑った



「え…一緒に…?
住むって、ここ、に?」



「うん…
まだ次のアパート決まってねんだろ?」



「それって…それって、同棲!?」



「同棲…ではない」



「あ、そっか…」



自分で言った後に

恥ずかしくなった



私と樽崎くんは

恋人でもなくて

恋愛感情もない



同棲って

そーゆー関係の人たちがすることだ



「え!でも、一緒に…って!?」



樽崎くん

今日も

何考えてるかわからない



「毎日、来るの大変かな…って思ってたし
暗い道をひとりで帰すのも心配だったし

部屋余ってるし…

別にオレの面倒みろとか
そーゆーこと言ってるんじゃなくて…

沙和の実家も近いし職場も遠くねーじゃん

そしたら
カズの世話にもならなくていいし…」



樽崎くん

そんなに考えてくれたの?



でも

同棲ではないとしても



樽崎くんと

一緒に住むってこと???



頭の中が

整理できない



一緒に住まない?って

言われたよね?





同居

シェア

居候



何にしても

同じ屋根の下で

樽崎くんとふたりで

生活を共にする



ニャー…



あ、アメもいた



「アメも沙和に懐いてるし…」



「私もアメのこと好きだけど…
え、でも…」



「フ…またそんな顔して…
別に取って食ったりしねーよ
そんなにこわい?オレって…」



どんな顔?



樽崎くんが

こわいわけじゃないけど

この状況がこわい



「そんなことないけど…」



そんなことないけど

心臓がバクバクいってる



そんなことないし

絶対そんなこと起きない



そーゆー対象じゃないのは

重々承知だけど



樽崎くんと

一緒に住むということに対して

身体がおかしな反応する



「考えてみてよ」



「うん…」



思考回路崩壊しそう