「樽崎くん
佐藤さんていう、女性の方だよ」
「佐藤さん?」
樽崎くんは松葉杖をついて
玄関に向かった
心当たりなさそうだった
「その節は、どぉもすみませんでした
病院に伺ったらもぉ退院したと聞いて…
本当に申し訳ありませんでした
なんてお詫びしていいか…」
女性の声が聞こえてきた
「お子さんのケガは大丈夫ですか?」
事故の相手の人かな?
「おかげさまで…
うちは擦り傷程度なので大丈夫です」
「それならよかったです」
「うちの子が飛び出したばかりに
本当にすみませんでした」
「オレも元気なんで、気にしないでください」
事故のこと
よく聞いてなかったけど
あの人のお子さんを避けようとしたのかな?
「あの、コレ食べてください」
「こんなに沢山いんですか?」
「実家が果物屋をしてまして
ご家族で食べてください」
「オレ、家族いないんで…
でも、わざわざありがとうございます
せっかくなので、いただきます
…
だから…
気にしないでください
オレなんかケガしても
誰も心配しないんで…」
盗み聞きとかよくないけど
ふたりの会話が聞こえてきた



