この恋は、『悪』くない。


ガタン…



物音がして振り向いたら



「「え!なんで?」」



樽崎くんだった



松葉杖とギブス



たしかに

樽崎くん



「なんで、沙和がここに?」
「樽崎くん、もぉ大丈夫なの?」



「もしかして、ずっと来てくれてた?」



「ずっと…うん…
ごめんなさい、勝手に…
アメが心配で…」



毎日来てた



「カズがエサやってくれてると思ってた」



「たまたま来たらカズ?さん?に会って…
それで…」



「なんだ…沙和が来てくれてたんだ
ホントはカズにアメのこと
知られたくなかったし
触られるのとか絶対ヤダったから
ホント、ありがと…」



「勝手にごめんなさい
あ、もぉ大丈夫なの?
え、どーやって帰って…」



「フ…沙和、落ち着いて…」



「あ、ごめん…なさい…
だって、ビックリして…
急に帰って来るから…」



「フ…オレの家だし…
帰って来てもいいじゃん

アメが心配で
タクシーで帰ってきた

無理矢理退院してきた」



ニャー…ニャー…



「アメ、ごめんな
よかった…
アメ、元気そうでよかった…」



樽崎くんが松葉杖を置いて

アメを抱いた



「よかった…
骨折したの脚で…
腕だったら、アメを抱けなかった」



そう言って

アメにキスした

樽崎くんは



ーーー



ニャー…



「よかった…
アメ、生きてて…」



アメを拾った時の

中学生の少年の顔だった



アメ

よかったね



樽崎くん帰って来たよ



アメ

よかったね



樽崎くん

アメが大好きだよ



「沙和、なんで沙和が泣いてんの?」



この涙はなんだろう



樽崎くんが帰って来た

樽崎くんが無事でよかった

樽崎くんにまた会えた

樽崎くんともぉ会えないと思ってた



「だって…ビックリしたよ…
事故とか…

樽崎くん帰って来なかったら
アメ、どぉするのかな?って…

心配だったよ…
また、いなくなったら、ヤダよ…」



あの時みたいに

急にいなくなって

急に会えなくなって



すごく心配だった



「フ…沙和、かわいいじゃん」



樽崎くんの手が伸びて

私の頭を撫でてくれた



「沙和が心配してくれてるとは思わなかった

オレはいなくならない
ずっと、ここにいる

来なかったのは
沙和じゃん

ただいま」



樽崎くんの

大きい手に引き寄せられた



左手にアメ

右手に私



「樽崎くん…おかえりなさい」



樽崎くんが無事帰って来て

安心したのか

涙が止まらなかった



「樽崎くん、痛かった?」



「うん、痛かった

けど…両手、無事でよかった」



私はついでかもしれないけど

樽崎くんはアメと私を

両手いっぱいに抱きしめてくれた



「樽崎くん、こわかった?」



「んー…こわかった

沙和、もぉ来ないかな…って…
こわかった」



こわかった?

私が来なくて?



また来ちゃった

樽崎くんのところに