この恋は、『悪』くない。


「じゃあ、晴輝に言っときます
えっと…澤村さんだっけ?」



「あ、はい…
入院してる間
私がアメのこと面倒みるからって
伝えてください
どれくらいで退院できるんですか?」



「仕事は3ヶ月休むらしいけど…」



「3ヶ月?
そんな大きい事故だったんですか?」



「オレもよくわかんねーけど
右脚骨折してて…
リハビリもあるから
入院は1ヶ月ぐらいかな…」



大丈夫かな?

樽崎くん



「きっとアメのこと心配してると思うから…
あ、ペットフードの種類とか分かったら
教えてください」



「や、オレわかんねーし…
晴輝が猫飼ってたのも知らなかった
澤村さん、家に来てるクセに
アイツの連絡先わかんないすか?
オレ教えましょーか?」



ホントに何も知らない

樽崎くんのこと



ご家族がどこにいるのかもわからないし

なんでひとりで住んでるのかも知らない



聞いたら悪いかな…って



連絡先も

聞く理由がなかった



「連絡先、いいです
勝手に他の人から聞いたら悪いし…
樽崎くん、教えたくないかもしれないし…
私の名前も言わなくていいです
アメは無事だって伝えてください
明日から、とりあえず毎日来ます」



樽崎くんから連絡先は

聞かれもしないし

教えてもくれなかった



私から聞いたら

また軽いとか思われちゃうし

聞けなかった



今日来なかったら

事故のことも

入院したことも知らなかった



私と樽崎くんは

その程度の関係だ