この恋は、『悪』くない。


私のアパートにバイクが着いて

もっとアパートが遠かったらな…って

残念な気持ちになった



もっと樽崎くんに触れてたかった

もっと樽崎くんといたかった



「ありがとう…送ってもらって…」



「うん、また来いよ」



優しい声



「髪…」



樽崎くんの手が私の髪に伸びた



乱れた髪を整えてくれた

ただ

それだけ



「ありがと…」



触れてほしかった

その手に



このまま引き寄せてほしいと思った



「…こわく、ない?」



優しい手から

不安そうな樽崎くんの声が

伝わってきた



「うん…」



また私

怯えた顔してるのかな?



「沙和…
そんな顔して夜道歩いてたら
襲われてたぞ
やっぱり送って来てよかった
じゃ、おやすみ」



樽崎くんの手が

私から離れた



「うん、おやすみ…」





どんな顔してた?



アパートの階段を上りながら

泣きそうになった



樽崎くんは

私のことは抱いてくれない



甘えたくても

甘え方がわからない



この感情は

軽蔑でも

警戒でもなくて



たぶん





樽崎くんが

好きだと思う