家の前に樽崎くんのバイクはなかった
出掛けたのかな?
じゃあアメも出掛けてるかな…
「おじゃまします
…
アメ…アメ…」
ニャー…
部屋に入ったら
布団からアメが出て来た
「ん?アメ寝てたの?」
ニャー…
いつもソファーの上にない布団
「…んー…ダレ…アメ…どーした…?」
樽崎くん!?
ソファーの布団から腕が出て来た
ニャー…
「あ、あの…おじゃまします
アメいるかな?って、ちょっと寄って…
バイクなかったから…
いるの知らなくて、勝手に入って
ごめんなさい」
「…なんだ…沙和…?」
布団の中から眠そうな声がした
布団から出てた腕に続いて
顔と身体が出て来た
また服着てない
下ちゃんと履いてるよね???
目のやり場に困る
「はーあ…
ごめん…昨日飲んでてさ…
今起きた…」
「ごめんなさい、起こしちゃって…」
「いやー…起こしてくれて、ありがと
友達に送ってもらったから
バイク取りに行かなきゃ…
沙和は?今日休みだよね?」
「は、うん…」
「どっか行って来た?
なんか、髪とか、いつもと違うから…」
「うん、あの…ラーメン食べて来た
あと、カフェ…
休みの日によくひとりでカフェ行くの」
「へー…今日もひとりで?」
「いつもはひとりだけど…」
「今日は?友達?」
「んー…」
友達ではない
「あ、オトコね…
はーぁ…寝みー…」
樽崎くんは
またあくびをして
アメを抱き寄せて撫でた
「会社の人だよ」
「そーなんだ…」
別にわざわざ言わなくてもいいのに
私
樽崎くんだって気にしてない
アメを撫でる筋肉質な腕
鍛えてるのかな?
仕事柄?
綺麗な身体
タトゥーしてないんだ
ピアスは?
伸びた髪の隙間から
耳を見た
してないんだ
まだ痛いの苦手なのかな?
また見惚れてしまった
樽崎くんに
あ…
耳の下
首のアザが気になった
タトゥーじゃないよね?
「ん?なに?」
視線に気付かれた
「首のとこ、アザ?
アメにひっかかれた?」
焦って咄嗟にそう言った
「や…アメ、そんなことしない」
樽崎くんが首を触った
「あー…」
心当たりがありそうな声を出した
同時に
私も
なんとなくわかって
恥ずかしくなった
キスマーク?
でも
樽崎くん
彼女いないって言ってたよね?
ホントはいるのかな?
私に嘘ついてる?
それともあの時はいなかったけど
最近できた?
「樽崎くん、ホントは彼女いるの?」
「や…いない
なんで?」
何も言えなくて
樽崎くんの手で隠された首を見た
「フ…コレ?
酔ってて、よく覚えてない」
キスマークじゃないよって
樽崎くんは言わなかった
やっぱり
キスマークなんだ
酔った勢いで?
彼女じゃない人となんだ
そーなんだ
モテるもんね
そんなこともあるよね
「私、帰るね
アメに会えてよかった」
「もぉ帰んの?」
「うん、ごめんね、起こして…」
心が
辛い
私
なにショック受けてんだろう?
「もぉ来ない?」
「なんで?」
「そんな気したから…」
ニャー…
樽崎くんに
何か悟られた
「アメ、またね…」
樽崎くんの質問には答えないで
アメを撫でて
部屋を出た
ウザいって思われたかな?
別に樽崎くんが
彼女じゃない人とそーゆーことしても
私には関係ないことなのに
きっと私
嫌な顔した
心が
ズキズキするのは
なんでかな?



