「おじゃましました」
外に出たら
バイクの音がした
ちょうど樽崎くんが帰って来た
「来てくれたんだ」
ヘルメットを取りながら
樽崎くんが言った
「うん、でもアメいなくて…」
「あー、アイツなら
またカレシかな…」
「え?」
「アメ、カレシいんの
フ…オスかメスかもわかんないけど
よく外で遊んでる」
ニャー…
「あ、噂をすれば…」
ニャー…ニャー…
「アメ、ただいま」
樽崎くんがアメを抱き上げた
「オレのバイクの音がすると
何もなかったみたいに帰って来んの
フ…アメ、オマエ恋してんのか?」
腕の中のアメを
愛おしそうに撫でる
今日も優しい顔をしてる
ホントに恋人を抱いてるみたい
見てて微笑ましい
私がアメといると
素になれてるなら
アメを抱いてる樽崎くんも
ホントの樽崎くんなのかもね
「本気で誰かを好きになるって気持ち
アメでもわかるのかな…」
独り言みたいに
樽崎くんは
言った
「あ、別にやきもちじゃねーよ
生きてたら猫も恋するのか…って
生きてるうちにアメに恋してほしかったから
嬉しいな…って…」
私の視線に気付いて
樽崎くんが言った
「うん、そーだね…
アメも恋してるのかもね…」
生きてるから
できるんだよね
きっと猫も同じだよ
「沙和は?」
「ん?」
「今、オトコいんの?」
「え…」
なに、その質問
「フ…オレ、シャワーしてくるわ」
樽崎くんが
私にアメを抱かせた
「アメ、待ってて…
風呂あがったらメシにしよ」
ニャー…
質問に答える前に
樽崎くんは家に入って行った
私も
待っててもいいのかな?
樽崎くんは
恋をしてるのかな?
好きな人
いるの?



