まさか、なんで?と思う人物からの着信に、スマホを持つ手が震える。「はい……もしもし?」と発した声も震えていた。

『ごめん、突然……どうしても話したいことがあるんだけど……』

 電話越しの竜生くんの声はなんだか疲れているようだ。

「話したいこと?うん、なに?」
『……いや、うーん……電話じゃなくて直接話したいんだけど、外で会えないかな?』

 その誘いにどきりとした。だけど瞬時に亜美ちゃんの顔が浮かび、二つ返事で承諾することは出来なかった。



 花火大会が終わったその日の夜に亜美ちゃんからメッセージが届いた。『美琴に話しておきたいことがある』という文面を読んで、私は覚悟をしたのだ。

『突然ごめんね……電話お願いしちゃって』
「全然だよ!今日の花火大会すごかったね、きれいだった」

 私の言葉に亜美ちゃんは『そうだね』と返したっきり黙り込んでしまった。
 「洗井くんのことかな?」と私が話題を振れば、亜美ちゃんが電話口で息を飲んだことが伝わってきた。

『うん……。美琴には言えなかったんだけど、私中学の時から洗井くんのことが好きだったの』

 なんとなく予想はしていたが、中学生のときからなのか、と衝撃を受けた。「そうだったんだね、ごめん……気づかなくて」と伝えた謝罪は本心からだった。知らなかったとは言え、ベラベラと私が垂れ流した竜生くんとの恋愛相談は、亜美ちゃんの心を傷つけていただろう。

『美琴は悪くないのよ!私が言ってなかったんだから……私こそごめん。騙すみたいなことしちゃって』

 亜美ちゃんは泣いていた。私に気づかれまいと気丈に振る舞っていたが、震える声を隠しきれていなかった。

「ううん。私も謝らなくちゃいけないことがあって……!その、まだ好きなんだ、洗井くんのこと」

 私の言葉に亜美ちゃんは驚いていないようだった。きっとお見通しだったのだろう。

『わかってたよ、だって洗井くんも……』
「ん?なんて?」
『ううん。なんとなくそうかなー、って思ってた』

 やっぱり……私わかりやすいって言われるからなぁ……。この調子じゃ竜生くんにも気づかれてるんじゃ……?いや、考えるのやめよ。考えても答えが出ないことについて悩んでも仕方ないわ。

 そして亜美ちゃんとは「お互いに頑張ろうね」と言って電話を切った。
 付き合ってなかったんだ……よかったぁ、と安堵したことは許してほしい。




『やっぱり直接会うのは嫌かな?』

 返事をなかなかしない私に、竜生くんの沈んだ声が届いた。

「ううん、嫌じゃないよ!いつ会うのかな?」

 嫌なわけない。心の中で亜美ちゃんに「ごめん」と謝って会える旨を伝えた。

『よかった。出来るだけ早く会いたい。だから今からは?』
「今から?」
『……うん。俺部活終わって帰ってるところだから、あの公園で15分後にとかはどうかな?』

 スピード感が凄すぎて体も頭もついていかない。けれどタイミングって大事だ。今度こそ私は二つ返事で了承した。