ベッドの上に起き上がり、シリウスは額に浮かんだ汗を手で拭う。髪やパジャマが張り付いて気持ち悪いため、シャワーを浴びることにした。

シリウスは、表の世界で生きている人間ではない。潜入やハニートラップなどで情報を手にしたり、ターゲットの救出などを行う特殊工作員として生きている。

最初からシリウスはこの世界で生きているわけではない。元々は会社員と父親と専業主婦の母親の間に生まれたのだが、普通の家庭に生まれたから幸せになれるわけではない。

父親は出張が多いため、シリウスはほとんど母親と一緒に過ごすことが多かったのだが、育児のストレスからか、シリウスは母親から虐待を受けるようになった。食事をもらえず、寒い中ベランダに追い出され、暴言を吐かれ、暴力を振われることも珍しくなかった。

そんな命の危険と隣り合わせの状態の中、シリウスの心の中にある人格が芽生えてしまった。それは、怖がりなシリウスとは真逆の暴力的な性格をしたライである。