猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

ガラガラと、氷とお水を詰めて戻って来る。それをおでこに乗せてくれた。

「よし!このまま安静にしてな!」

火照ったおでこ、身体に心地好い冷たさが広がる。

「あ……きもち…いい……」

「薬は?飲める?」

「……さっきのんだ」

「さっき?」

「うん……ろくじころに……」

と言った瞬間、楓の顔が般若の如く険しくなった。

「なんっでその時に起こさないのよ!」

「だって……きもちよさそに……ねむってたし……」

「アホか!そーゆー時は起こしなさいよ!風邪を甘く見るんじゃない!」

ポーッ!!と、機関車の様に楓の頭から煙が出るんじゃないか、と思う位怒っている。

余りの剣幕に、「そんなに怒らなくても……」と言いかけて止めておいた。

ここは素直に謝っておこう。

「……はい……ごめんなさい……」

「まったく……」

ブツブツ言いながら、顔の汗を拭いてくれる。

長女で下に弟が二人いる楓は、何気に面倒見が良い。

「……ありがとう」

「どう致しまして!……もうすぐお昼だし、お粥作るからそれ食べてもう一度薬飲んで寝てしまえ!」

プイッ!と、立ち上がろうとする楓の服の裾を掴んだ。

「あり……がと……」

「はいはい。お礼なんて良いからもう少し寝てな。会社にはあたしから連絡入れといてあげるから」

「うん……」

楓が服の裾を掴んだ私の腕をひっぺがし、布団に潜り込ませる。

氷のうの心地好さと、側で楓が看病してくれると言う安心感で、言われるままに私は瞼を閉じた。