私の制止が余程不満だった様で、「なんだよぅ……」とブツブツ文句を言いながら頬を膨らませて不貞腐れた。

なんで私がこんなに焦って止めたかと言うと、楓はゲームセンターにあるパンチングマシーンで男子に引けを取らない、むしろそれを上回る程の記録保持者だ。そんな奴が人を殴ったらどうなるか?最悪、病院送りになってしまう。

(あー、焦った。放っておいたらマジで殴り込みに行きそうな勢いだった)

焦ったし、本当に行きそうになったら全力で止めたけど、私の為にそこまでしようとしてくれた楓の気持ちがすごく嬉しくて、心強かった。

「ありがと……」

私はボソッとつぶやいた。

「え?」

「うぅん?なんでもない」

えへへ、と笑うと、「なによ、もぅ……」と楓も笑う。

私は、親友の優しさに涙目になっている事を悟られない様に、少し冷めてしまったミルクティーを一気に飲み干した。

「……これ、一緒に飲まない?」

そう言って楓が見せたのは、この前プレゼントで渡した『リラックス効果』のハーブティー。

今の私達には必要な効果だ。

「……うん。飲む」

静かに頷き、それを受け取った。