「実森さん、金さんのサンドウィッチ出来ました」

「あ、はーい」

三毛さんの声にハッと我に返った。

ヤバいヤバい。手伝いと言ってもちゃんと仕事中なんだから、回想はこれくらいにしておこう。

私は良い匂いを漂わせているサンドウィッチを受け取り、金さんのテーブルに運ぶ。

「金さん、お待たせ致しました!」

「おっ、ありがとな実森ちゃん」

金さんが新聞を畳みながらサインウィッチセットを見て笑顔を浮かべた。

(よっぽど好きなんだなぁ)

金さんの笑顔を見たらなんだか私まで嬉しくなっちゃって、「ごゆっくりどうぞ」とお辞儀をしてルンルンで厨房へと戻る。

「何か良い事あったんですか?」

私の変なテンションを見た三毛さんが、首を傾げた。

「え?あ、えっと……。金さんが嬉しそうに三毛さんの淹れた紅茶を飲んでいるのを見たら、なんだか私まで嬉しくなっちゃいました」

アハハ、とニヤニヤしている所を見られた恥ずかしさで、頭を掻いた。

「実森さんまで嬉しくなっちゃったんですか?」

「あ、ハイ。そーです……」

キョトン、とした三毛さんにそう聞き返されて恥ずかしくなる。

(絶対に変なヤツって思われたな……)

そう思って三毛さんをチラ見すると、何故だか三毛さんもニヤニヤしていた。

「……あの、笑うほど気持ち悪かったですか?」

ちょっとしょぼんとして聞いてみたら、

「え?あ、違います!あの……実森さんが嬉しそうにしてるのを見たら、僕も嬉しくなっちゃいました……」

そう言って顔を赤くしながらフイッと顔を逸らされた。

(私が嬉しそうにしていたら三毛さんまで嬉しいの?本当に?気持ち悪かったんじゃなくて?)

そんなん、余計に嬉しくなっちゃうじゃないか。

予想外のセリフに、ニヤニヤが加速する。

「すみませーん」

私と三毛さん、二人でニヤニヤしていたら、さっき入って来たお客さんから声を掛けられた。

「あ、は、はーい!み、実森さん、お願いします」

「あ、は、はい!」

私は急いでお客さんのテーブルに向かった。

その後、フワフワした気持ちのまま接客なんてしたもんだから、失敗続きだった事は言うまでもない。