「大丈夫ですか?」

「……………」

声を掛けられたけど、まったく面識のない人に、私は警戒心MAXで固まった。

「ニャーン……」

しかし子猫は、おじさんの腕の中で嬉しそうに目を細めている。

「はいはい。キミも大丈夫ですか?」

子猫の言葉が分かるかの様に、「うん、うん」と頷くおじさん。

「こんなに濡れてしまっては、体が冷えてしまいますよ」

ニコッと笑って、私にハンカチを差し出してくれた。

「ニャーン……」

「あ…そうだね。ハンカチじゃどうしようもないね……猫さんもこう言ってますし、僕のお店で雨宿りして行きませんか?すぐそこで喫茶店をやっているんです」

指差された方向を見ると、木々の隙間からチラッとログハウスが見えた。

「見えますか?あそこのログハウスなんですけどね」

「……………」

私は無言で頷く。

「では、行きましょう」

「……ニャーン」

「はいはい。君も行きますよ。……どうぞ」

差し出された手を掴んで、立ち上がる。

雨で冷えているせいか、おじさんの手がとても温かい。

その体温が手から全身に広がって行く感覚。

(あたたかい……)

おじさんの傘に入れてもらい、並んで歩き出す。




 パシャン……――


        パシャン……――



   サァァ……――



          サァァ……――





雨が、小降りになっていた。