「三毛さん」
私は三毛さんの手にそっと触れる。
「すみません。私、三毛さんとデートみたいな事が出来てちょっと浮かれていました。これからはもっと気を付けます」
そう言うと三毛さんは少し安心したのか、添えてある私の手をギュッと握って笑った。
「はい。そうして下さい」
儚く笑う三毛さんを見て、『この人のそばにいてあげたい』と言う思いがより一層強くなった。
強い様で弱い、三毛さんのそばに。
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「あの、今日は本当にありがとうございました」
私の住んでいるアパートの前で三毛さんに深々とお辞儀をした。
「いえいえ、どういたしまして」
三毛さんが本調子じゃないから送って行くと言う申し出を断ったんだけど、
『このまま実森さんを一人で帰らせた方が不安です!』
とすごい勢いで言われて押し切られてしまった。
milk tea(三毛さんの家)から私のアパートは大分離れているから、これから三毛さんがその距離を歩いて帰るのかと思うと罪悪感でいっぱいになる。
「三毛さん、あの……」
「はい?」
「今度、お礼をさせて下さい」
「え?」
三毛さんは私の言葉に目を丸くしている。
「お礼、ですか?」
「はい。今日は色々お世話になったので、それのお礼をさせて下さい」
今日は三毛さんに迷惑を掛けっぱなしで、このまま終わったんでは私の気が済まない。


