猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

うっとりしていて、呼ばれていた事に気が付かなかった。

「どどど、どうしたんですか!?」

「信号!赤です!!」

「へ??」

指さされて前を見ると、歩道の信号が赤になっていて車がビュンビュン通り過ぎて行く。

「あ……」

顔からサァ――と血の気が引く。

「す、すみません!!」

私は三毛さんに頭を下げた。

危なかった。三毛さんが腕を引っ張ってくれなかったら赤信号へ飛び込む所だった。

「……いえ、でも歩いている時の考え事は危険ですよ」

「本当にありがとうございます」

「いえ……」

「…………」

「…………」

沈黙。

三毛さんは私の腕を掴んだまま固まっている。もう腕を放してくれて平気なんだけど、動く気配が全くない。それに、微かだけど私の腕を掴んでいる三毛さんの手が震えている様な?

「三毛さん?あの、腕……」

「あ…す、すみません!」

私の声にハッとし、掴まれた腕が解放された。

「どうしました?大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」

さっきまでなんともなかった気がするけど、具合でも悪くなったのかな?

街灯に照らされた三毛さんの顔色が悪い。