猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

「――お友達の誕生日プレゼントですか」

「はい。なかなか決まらなくて、どうしようか頭抱えてました」

食後の紅茶とデザートの生クリームたっぷりのパンケーキを食べながら、さっきまでの経緯を話した。

「ふむ……そのお友達が欠かさず手元に置いている物はどうですか?これ、絶対にあるな、と言う様な……」

「欠かさず手元に置いている物……?」

言われて私はう~ん、と考えた。

時計、携帯、パソコン、メモ帳、ブルーライト対応の眼鏡、携帯ゲーム機。

ん~……正直どれもピンと来ない。

大分と悩んで、首を捻りながらテーブルに目をやる。目の前には飲みかけの紅茶と食べかけのパンケーキ。

「あっ……」

「何かありました?」

「……紅茶」

思い付いた物をボソッと呟く。

「え?」

「アイツ、私と同じく紅茶が好きで、パソコン横に置いてあるマグカップに絶対紅茶が入ってます……」

灯台下暗し。そうだ。私が紅茶を好きで、強引に進めてる内にアイツも好きになったんだ。

小説家なんてやっているから徹夜とか当たり前で、眠気覚ましに珈琲を飲む人は沢山いるけど、楓に至っては紅茶だった。

「ああ!紅茶良いですね!丁度ここには沢山ありますし、お友達も喜ぶと思いますよ」

ポンッと手を叩いて三毛さんがうなずく。

「そう、ですね……そうします!」

さっきザッと見たらハーブティーとかもあって効能云々も表記されていたし、眠気覚ましとかがあればそれを贈れる。

「ありがとうございます!三毛さんのおかげでスッキリしました!」

「いえいえ。お役に立てて良かったです」

ニコッと笑う三毛さんにつられて私もえへへと笑った。

なんだろう。確かに金さんの言う通り、少し三毛さんの雰囲気が変わったかもしれない。それも、良い方に。

(こう言う時間が、ずーっと続けば良いなぁ……)

私は、目の前で笑っている三毛さんを見て、心の底からそう思った。