「ん~……何が良いかなぁ……」

無事に有給が取れて楓のプレゼントを買いにデパートに来ている。しかし、色々見て回ってるんだけどいまいちピンと来る物が無い。

「こんなに選び放題なのに……アイツ、今何が欲しいんだ?」

服・バッグ・靴・香水・アクセサリー・雑貨、エトセトラエトセトラ。さっきから、専門店が何店舗も入っているお店の中をグルグルグルグル。

「うう~ん……あ、そうだ」

少し考えて、このお店の道路挟んで向こう側に小さい雑貨屋がある事を思い出し、そのお店に行ってみようと思い付いた。

二階から一階に降りた所で、どこかからかフワッと紅茶の香りが漂う。

「ん?」

ピタッ、と足が止まる。

「……あれ?こんな所にこんなお店あったっけ?」

今まさに出て行こうと思っていた出入り口のすぐ横に、見た事のない紅茶屋さん。milk teaの様にログハウス調の作りでとても暖かみの感じられるお店だ。

入り口の看板に『オープニングセール』と書かれている。

「あ、新しく出来たんだ。知らないわけだ」

なんとなく、紅茶の香りに誘われて店内に足を踏み入れる。

「へぇ~。種類が豊富なんだなぁ……」

グルっと見回すと、壁に沿って棚があり、その中に所狭しと紅茶が並べられていた。

さすが百貨店。あまり聞いた事のない様な銘柄も、豊富に取り揃えている。

「あ、カフェも併設されてるんだね」

少し中に入ると、端の方に小さくスペースが設けられており、ここで売っている紅茶を飲める様だ。

(軽食も食べられる)

壁に貼られているメニュー表を見て、ナポリタン美味しそうだなぁ…なんて余所見をしていたら、紅茶を見ていた人にぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさいっ!」

私はガバッ!と頭を下げる。

「……実森さん?」

「へ!?」

突然名前を呼ばれ、下げた頭を勢いよく上げた。

「三毛さん!!」

そこには、あの雨の日と同じ様にシャツにジーンズと言うシンプルな服装で紅茶をたくさん抱えている三毛さんがいた。

なんと言う偶然!ぶつかったのは、紛れもなく三毛さんだった。

「あ…え!お買い物ですか!?」

「はい。ここは珍しい茶葉を種類豊富に取り揃えてあると聞いたので」

「へ~、そうなんですか!」

予想もしてなかった所で会えて、私のテンションは上がりまくりだった。