猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

「でも、三毛さんはその気なくても、向こうが好きになっちゃったら?そんで強引に迫られて、もし何かあったら……」

私は想像しただけで恐怖を感じ、握っていたお酒を一気に煽る。

「う~ん……。その可能性は無きにしもあらず」

楓が顎に手を置いて考え込んだ。

「はぁ……本当にそうなったらどうしよう……」

「そうならない様に、気を付けてないとダメかもね~」

他人事の様にフンフ~ン♪と鼻唄を歌いながら楓が何かパソコンに打ち込み始めた。こないだまでパソコン画面とにらめっこ状態だったのに、その不調がどこ吹く風の様に、珍しくタイピングの手が止まらずに動いている。

「……新作?」

「え?……まあね」

ニヤッと笑いながら、こっちを向いた。

「ふ~ん。本になったら買うから」

「はい!よろしくお願いいたします」

楓は『買う』と言う言葉に瞳を輝かせ、ピースサインを出した。

ゲンキンなやつめ……。

さっきの『ニヤッ』とした顔がなんか引っかかったけど、せっかく筆が乗っているのに水を指す様な事はしないでおこう。

「今日、泊まってく?」

「……いいの?」

「うん。愚痴聞く位しか出来ないけどね。それに、そんなにお酒飲んでるんじゃ帰るのしんどいでしょ?」

「ありがとう」

こうなったら、寝るまでトコトン不満を聞いて貰おう。

「よし!じゃ、あたしもちょっと休憩ー!飲むか!」

「うん……」

飲み干している缶を楓がごみ袋に片付け、冷蔵庫から新しいお酒を出してくれた。

次の日、二日酔いで出勤した事は言うまでもない。