猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

しばらく頭を撫でていると、突然アールが私の膝から降りて、いつもの窓際のベッドへと戻ってしまった。

こちらに背を向けて、丸くなる。

「アール?どうしたの?おいで?」

声をかけても、尻尾すら動かさない。

どうしたんだろう……?

「……三毛さん。アール、なんか機嫌悪くないですか?」

ティーポットにお湯を注いでいる三毛さんに、尋ねた。

「ええ、まぁ……」

三毛さんが、私の質問になんとも表現し辛い笑顔を浮かべる。

「何か――」

あったんですか?そう尋ねようとした瞬間――、

「マスター?仰っていた茶葉ってこれで合ってますぅ?」

と、茶葉の缶を両手に持ちながら、従業員専用の入り口から一人の女性が入って来た。

(――え?)

見た事のないその女性は三毛さんの元に駆け寄り、持っている缶を見せた。

(だ、誰!?)

私はビックリして、言葉に詰まる。

「ええ、合っていますよ。一つをそこの棚に入れて、もう一つはそっちの部屋に置いておいて下さい」

「はーい」

間延びした返事をしながらその女性は、三毛さんが指差した部屋へと消えて行った。