猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

前から思っていたんだけど、三毛さんのお店は繁盛している割りに他に従業員がいなかった。だから忙しいお昼時とか夜は三毛さんが一人でパタパタ走り回っている。常連さんとかはお冷なんかを自分で取りに行ったり。

私もたまに手伝ったりしていたんだけど、皆から「三毛ちゃん、従業員雇ったら?」と言われて三毛さんも「お客さんに迷惑がかかるなら」って事で求人の貼り紙を出した。

「確実に雇って貰えそうなの?」

「多分。私、学生の頃ファミレスでアルバイトしてたし、その時はホール任せられてたから大丈夫だと思う」

誰かが面接に来たって話は未だに聞かないから大丈夫だと思うんだけど……。

「ああ、そう言えばそうだったね。おばさん達はなんて?」

「お母さんもお父さんも、好きにしたらって。私が元々紅茶好きって知ってるし」

「そう……。まあ、実森がそうしたいって言うんなら、あたしは応援するよ」

楓がニッと笑って私の頬を突いた。

「ありがとう」

私は突かれた頬をさする。

これ楓の癖なんだけど、事ある毎にこれをやって来るから前に「なんでそんなに触るの!」と怒ったら、「実森のほっぺはぷにぷにで触りたくなるんだ!」と逆ギレされた。

あまりにも堂々とそんな事を言うからおかしくて、その時から放っといてるんだけど、いつまで経ってもこの癖は治らない。

暖かい陽射しが降り注ぐ中、ジャズをBGMにまったりと二人で紅茶をすする。

三毛さんに勧められた茶葉。琥珀色に輝くこの紅茶はクセがなく、とても飲みやすい。